count basie

「LIVE!」(LASERLIGHT 15 797)
COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA

 CD時代になってカウント・ベイシーの未発表音源がぼこぼこでてくるようになったが、これもその一枚。ただし、録音年月日も50年代後期とあるだけで定かではないし、場所もわからない(そのわりにメンバー全員の名前が判明しているのもおかしい。これって、当時のレギュラーメンバーを書いてあるだけじゃないのか?)。タイトルもめちゃいいかげんだ。でも、内容は保証付き。めちゃくちゃいい。ほぼ、「イン・ロンドン」と同じメンバーで、「ウッドサイド」は、(たぶん)フランク・フォスターがひとりで吹いているバージョンという時期。しかし、チャーリー・パーカーやコルトレーンの未発表とちがって、ベイシーの場合は、アドリブに命賭けてます的な音楽ではないので、同じ曲ではメンバーはだいたい似たような構成のソロをするわけだから、アドリブを聴きくらべる、といった楽しみはあんまりない(マニアックなひとは別だけど)。それよりも、曲のテンポ設定とかが微妙にかわっていたりするのが、スウィング感におよぼす影響……みたいなところを楽しむのがいいのではないか(たとえば、このリトル・ポニーはちょっと早いね、とか)。あと、正規録音では聴いたことのない曲を楽しむとか。もちろん、「イン・ロンドン」や「オン・ザ・コースト」などを聴いてから聴くべき盤だが、スウィング感もソロのグレードもドライヴ感もそして録音状態もほとんど遜色ないので、もう一枚というときにはおすすめ。

「CORNER POCKET」(LASERLIGHT 15 789)
COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA

 上記とたぶん同じときのライヴではないかと推測される。こちらも録音場所、年月日不明で、メンバーだけ正確にわかっているという変な音源。一曲めは、チャーリー・フォークスのバリトンがめずらしくフィーチュアされていて、この目立たぬ、ベイシーバンドの至宝のバリトン吹きがたいへんな名手であることがわかる。二曲めの鋭く、ノリのいいアルトソロはフランク・ウエスでこれもおいしい。3曲めの……といちいち言い立てていきたくなるのがベイシーの未発表音源を聴いたときの特徴なのである。とにかく全曲演奏も録音も選曲もすばらしいので、買って損はない。ソロもそれぞれすばらしいし、マーシャル・ロイヤルの強力なリードを聴くだけでもご飯3杯は食べられます。こんなのが超格安で買えるとはいい時代になったもんだよなあ。

「BASIE IN LONDON」(VERVE MV4020)
COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA

 微妙な言い方だが、ベイシーの数多いアルバムのなかから一枚、といわれたら、うーん、このアルバムになるんじゃないんじゃないんじゃない……? と答えることになるかもしれない。いや、もうこれしかおまへん! と断言するようなものでは毛頭無く、選曲とかバンドとしての時期とか録音とかメンバーとか、さまざまな要素を勘案して、こっちかなあ、やっぱりこっちかなあ、と悩みつつ、総合的な見地から、まあ、このあたりに落ち着くかなあ、といった感じだろうか。だから、本作は、すばらしい作品ではあるが、欠点というか、無い物ねだりなのかもしれないが、ああ、これがこうだったらなあと思う部分も多々ある。たとえば、録音。ヴァーヴは総じて、ビッグバンドの録音は下手だと思うが、このアルバムはそのなかではましなほうである。でも、個人的にはルーレットのあざといエコーのかかった録音やパブロの音のいいやつのほうが好きである。ヴァーヴのベイシーは、音の分離が悪く、全体にもやもやしていて聴きづらい。さっきも書いたがこのアルバムはましなほうである。あと、一曲目の「ウッドサイド」だが、たしかに名演だが、やっぱりこの曲はバトルのほうがいい(大和明の解説ではバトルしていると書いてあるけどね……すごい耳)。全体に押せ押せナンバーが多く、たとえばアルトやボントロフィーチュアのバラードのええやつが入っていないのも残念。トゥー・フランクスは悪くないが、ロックジョウやフォレストのようなアクがないので、あっさりした雰囲気にどうしてもなってしまうのも、物足りないといえば物足りない。ヴォーカルも3曲もいるか? という気もする。「オーライト・オーケイ・ユー・ウィン」と「カムバック」だけでもよかったのでは。……というようなさまざまなことを考えても、やっぱりこのアルバムがナンバーワンだと思う。ジャズ喫茶にいて、冒頭の観客のどわーっというものすごい歓声のあと、おなじみのピアノのイントロが出て、「おっ、『イン・ロンドン』や」と顔がほころぶ瞬間は何物にも代え難い。今はこのアルバムを本当の意味で「鳴らして」くれるジャズ喫茶もないでしょうが。今出ているのは別テイクやボーナストラックが入っているのだが、うちにあるのは古いLPなのです。

「BASIE BIG BAND」(PABLO RECORDS 2310−756)
COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA

 これもまた非常に微妙な言い方になるが、コーナーポケットのマスターが亡くなってから、私のベイシー熱もすっかり冷めてしまったようだ。今は、こうやってレコードの感想を書くために聴く以外は普通のジャズはまず聴かない。買うのも聴くのもフリー系ばかりである。とはいえ、18ぐらいでベイシー熱にかかり、25年以上もベイシーを聴き続けてきたのだから、見せかけとかポーズではなかったのだろうが、少なくとも今はあまり積極的に聴く気になれない。高校時代、ほとんどフリージャズしか聴いていなかった私は、先輩からいくらベイシーを聴け、ベイシーはええで、と言われても、ベイシー? そんなしょーもない古い音楽、誰が聴くかい、という感じだったのが、コーナーポケットで聴いてショックを受け、以来、熱烈なファンとなったわけで、つまりベイシー(とコーナーポケット)は私と「普通のジャズ」「楽しいジャズ」の架け橋だったのである。私はどちらかというと音楽をマジ聴きする、というか、音楽といっしょに苦しむタイプで、だからコルトレーンやドルフィーやフリー系の音楽を愛しているわけだが、そんな私が、いろいろなタイプのジャズをわかる(というのは嫌な言葉だが)ようになったのは、コーナーポケットのマスターとマスターが聴かせてくれたベイシーの音楽のおかげなのである。マスターはいつも、「これはいいよ。これを聴きなさい」といってすすめてくれるわけではなく、さりげなくレコードをかけて、こちらの反応をみながら、ほかのアルバムをかけていき、そうやって無言で「教えて」くれた。そういうやりかたをするには、そのレコードの音がものすごく説得力をもっていなければ無理なわけで、そのためにマスターはオーディオにこだわったのだと思う。最高の音で鳴らされるベイシーの音楽は、たしかにあのとき、まだ十代で、尖った音楽しか受け付けなかった私の頭にすーっと入ってきて、有無を言わせずに身体を揺さぶったのである。そんなマスターが、ベイシー御大が亡くなったときにかけつづけ、「俺が死んだときもこの曲をかけてくれ」と遺言のように口にしていたという「フレックル・フェイス」が入っているのがこのアルバムである。スタジオ録音としてはたいへんハイレベルの演奏で、パブロ時代を代表する名盤といえる。全部ネスティコの作・編曲だが、「フレックル」のほかにも「フロント・バーナー」「オレンジ・シャーベット」「ザ・ヒーツ・オン」「ソフト・アズ・ベルベット」「ウインド・マシーン」……など曲もええ曲ばっかで、メンバーもすばらしく、フォレストやアル・グレイによるソロの応酬が楽しめる。ベイシー御大もまだまだ元気なころで、まさに「ベイシー・ビッグバンド」というタイトルにふさわしい内容である。

「MONTREUX ’77」(PABLO LIVE 2308 207)
COUNT BASIE BIG BAND

「BASIE BIG BAND」が70年代ベイシーを代表するスタジオ録音だとすれば、本作はまちがいなく70年代ベイシーを代表するライヴ盤である。とにかくA面B面、どこを切っても金太郎飴のように名曲・名演があふれだす稀有な傑作なのだ。「BASIE BIG BAND」から、ネスティコの「ザ・ヒーツ・オン」「フレックル・フェイス」という二大名曲で幕をあけ、「スプランキー」や「リル・ダーリン」といったルーレット時代のヘフティのヒットナンバーや、「チュニジアの夜」といったバップ曲、「昔はよかったね」といったエリントンナンバー、「モア・アイ・シー・ユー」「バグ・オブ・ドリームス」といったバラード、そしてもちろん「ウッドサイド」や「ワン・オクロック」も入っているという、ベイシーの全時代を俯瞰できるような選曲で、メンバーもドラムにブッチ・マイルス、ボントロにアル・グレイ、テナーにジミー・フォレスト……といったきら星のような布陣。とくにこのグレイとフォレストのふたりは大活躍で、フィーチュアリングナンバーでは、持っている力をすべて出し切るような、圧倒的なソロを展開して腹一杯になる。A面B面を通して聴くと、当時のベイシーのステージを目の前で堪能したような気持ちになれる名盤であります。

「PRIME TIME」(PABLO RECORDS MYF1081)
COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA

 メンバーは悪くない(というか、かなりいい)のに、どうもぴりっとしない。ほとんど聴くことはないなあ。学生のころは「ヤガッタ・トライ」をバンドで演奏しなくてはならないという事情もあって、よく聴いたが……。エレベの入ったダサいジャズロック「バンダル・オ・ファンク」はまったく聴きたくないし、じつは「ヤガッタ」のピアノはベイシーではなくナット・ピアースだし。このアルバムと「アイ・トールド・ユー・ソー」あたりはどうもあまりぴんとこない。「ベイシー・イン・ヨーロッパ」や「モントルー77」のまえの時期なのに、なぜだろう。結局、十分な準備なしにスタジオに入り、ほぼ初見で譜面を読んでいた、というようなことかもなあ。

「ON THE ROAD’79」(PABLO TODAY MTF1611)
COUNT BASIE AND ORCHESTRA

 大迫力の「ウインド・マシーン」ではじまるこのアルバムは何十回聴いたかわからん。ケニー・ヒングのテナーソロはがんばっている(「ベイシー」でも)。ボントロソロとサックスソリでおなじみの「インナ・メロー・トーン」も、このころのコンサートの目玉のひとつでもあったフリューゲルフィーチュアの「アナザー・ユー」も、ベースが楽しい「ジョン・ザ・サード」も、いったん終わると見せかけて……の「ブルース・フォー・ステファニー」も、エリック・ディクソンのルーティーン通りのソロが聴ける「スプランキー」も、ボーカルフィーチュアの「ワッチ・ファット・ハップンズ」や「ワークソング」も、ライヴということもあって非常に荒い演奏ではあるが、その分、ベイシーバンドが目の前で演奏しているような生々しい迫力に満ちている。こういった、ちょっと引っ込んだ感じのバランスは、商品としての録音としてはいかがなものかと思うけれど、実際、生で聴くベイシーバンドはこんな感じだった。このボーカルのデニス・ローランドというひとは、私はさほど好きではないのだが(やはり、ベイシーにはブルースシンガーがにあうと思う。このひとはソウルっぽいのです)、このアルバムにかぎってはすごくいいと思う。A面B面ともに見せ場があって、どちらを聴いてよい。とくに傑出したソロイストがいるわけでもないのに、ひとつひとつのソロはプロフェッショナルとしてのレベルを保っており、まさに「オン・ザ・ロード」をこなしているロードバンドとしてのベイシーオーケストラの典型的な演奏、ということで親しみのもてるアルバムとして、いつまでも愛聴したい。

「ME AND YOU」(PABLO RECORDS 28MJ3280)
COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA

 このアルバムのまえの「ファーマーズ・マーケット・バーベキュー」とそのまえの「ウォーム・ブリーズ」(なんちゅうタイトルや)は、ドラムがグレッグ・フィールズというまるでビッグバンド向きでないひとなので、私個人としては最悪の印象があるが、本作以降はデニス・マックレルというイケメン黒人ドラマーに替わり、かなり改善された(といっても、もちろん、ソニー・ペイン、ブッチ、ダフィー……といった猛者には足元にもおよばない。入団したて、ということもあるだろうが、軽ーく入る、手数の少ないフィルインにはどうもノレないし、バンドも躍動しない。このひとも結局はビッグバンド向きではなかったのでしょうね)。本作は「88ベイシー・ストリート」とほぼ同時期の録音で、来日もした若手テナーのエリック・シュナイダーとアルトのクリス・ウッズが入っている点は貴重だし、7曲中、スモール・コンボのものが3曲入っているという点もおもしろい構成である。おなじみの「モートン・スウィング」も入ってるが、なんでいまさら、同じアレンジをスタジオでいれたのかよくわからん(絶妙のテンポ設定ではあるが)。実をいうと、あまりエリック・シュナイダーのソロが出て来ないのが残念なのだが、その分、エリック・ディクソンの変態テナーがたっぷり聴けるのがうれしい一枚。まあ、この時期としては聴きどころがあるなあ、という程度ですが。

「FANCY PANTS」(PABLO RECORDS 2310−920)
COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA

 ベイシーの死後にでたアルバムだが、これが意外なほどすばらしいのだ。ネスティコの作曲・アレンジもはまりまくっているし、もしベイシーがこのあとも生きていたら、このアルバムの曲から何曲かはロードで演奏するレパートリーに入ったと思われる。ドラムのデニス・マックレルも、「ミー・アンド・ユー」「88ベイシーストリート」あたりとくらべるとかなり進歩しているし(格段に、とはいえないが)、ソリストはみんなびっくりするぐらいがんばっていて、とくにクリス・ウッズのブロウが聴けるのがうれしい。こうなってみると、来日公演のときかならず演奏していたウッズフィーチュアのスローブルースが入っていないのが惜しいなあ。このあとウッズはすぐに亡くなってしまったのである(ジャズ批評の別冊だったか、評論家のだれかが、クリス・ウッズは晩年、ベイシーオーケストラでの来日が予定されていながら果たせなかった、と書いていたが、私が大阪や京都で見たあのひとはいったい誰だったのだろうか)。ベイシー御大も、なぜか(といっては失礼だが)元気で、これはやはりバンドが躍動しているからなのだろうな。とにかく80年代ベイシーを代表する一枚であり、ベイシーの遺作にして傑作。「ウォーム・ブリーズ」以降はもういいや、と思っているひとは、だまされたと思って一度聴いてほしいです。しかし、ジャケットにはタイトルがなく、「BASIE」としか書いてなくて、裏ジャケットに「ファンシー・パンツ」とあるのは、遺作であることを強くあらわそうとしたグランツの意志だろうか。それにしても、遺作が「ファンシー・パンツ」って、ほかにタイトルはなかったのか。

「BASIE」(ROULETTE YW−7831−RO)
COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA

 俗に「アトミック・ベイシー」と呼ばれているアルバムで、原爆のきのこ雲が大写しになっているところからそういう名前がついたのだろうが、ジャケットのどこにも「アトミック・ベイシー」とは書いていない。「ベイシー」というのが正式名称である。しかし、日本人としてはどうしてもこのジャケットは許せないものがあって、このアルバム当時のベイシー曲をレパートリーにしているアトミックジャズオーケストラという関西のビッグバンドがあり、演奏自体はおそらく世界に通用するたいしたものだと思うが、あのネーミングだけはいかがなものかと思う。単に原子力という意味ではなく、あきらかにジャケットにはきのこ雲があがっているわけですから。話がそれたが、このアルバムはもちろんだれもが知っているたいへんな、とんでもない傑作でありまして、この時代の主要レパートリーで、かつ、ベイシーが晩年までライヴで演奏しつづけた曲がこの一枚にぎゅーっと詰まっているのである。一曲目の、ベイシーのストライドをフィーチュアした「キッド・フロム・レッドバンク」から、「フー・バード」「テディ・ザ・トード」「ワーリー・バード」「スプランキー」(この曲のソロ、フォスターか? と思ったが、やっぱりロックジョウですよね?)「ファンテイル」「リル・ダーリン」……と「捨て曲」がない。ソリストのなかではロックジョウがひとりで大活躍しているが、フランク・フォスターやウエスもいるのに、もったいない話である。

「CHAIRMAN OF THE BOARD」(ROULETTE YW−7846−RO)
COUNT BASIE

 ヘフティやベニー・カーターなどの外部アレンジャーではなく、フランク・ウエス、フランク・フォスター、サド・ジョーンズという、当時のバンドメンバーによる作曲・編曲集(一曲だけアーニー・ウィルキンスのアレンジのものも入っている)。これがなかなかいい。このアルバム収録の曲のなかから、フォスターの「ブルース・イン・ホス・フラット」「フー・ミー」、ウエスの「セグエ・イン・C」、サドの「HRH」など、ライヴでのレパートリーとなるものが出ている。ジャケットもすごくいい感じで、フランク・フォスターがあまりに若い。なお、ビリー・ミッチェルが、一時的に引退(音楽事務所の手配師になったとか)したロックジョウのかわりに入っている。

「BREAKFAST DANCE AND BARBEQUE」(ROULETTE YW−7843−RO)
COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA FEATURING JOE WILLIAMS

 ルーレット時代のライヴの代表作。とにかく全曲凄い。非常にライヴ感のある録音になっているのも特徴で、客の声やらメンバーの声やらいろんな物音やらが入っているが、鑑賞の邪魔になるどころからとても臨場感のある、迫力あるサウンドである。一曲目の「インナ・メロウトーン」からぐぐっとこのミディアムのグルーヴに引き込まれたら最後、ジョー・ウィリアムスのボーカルフィーチュアの2曲も含めて、最後まで一気に聴いてしまうほどの充実した内容。A−3のサド・ジョーンズの曲はめちゃめちゃモダンで、ベイシーにもちょっとモダンすぎる感じもあるが、当時のベイシーバンドはこんな曲でも涼しい顔でこなせるだけのパワーと技術があった。ハリー・スイーツ・エディソンが入っているのもうれしい。

「KANSAS CITY SHOUT  THE MUSIC OF BENNY CARTER」(ROULETTE YW−7847−RO)
COUNT BASIE AND HIS ORCH.

 これも傑作だが、まさに組曲なので、一曲一曲を取り出して、ええの悪いのと言いにくい作品である。聴いていると、「不夜城」と呼ばれていたほどの隆盛をほこっていたかつてのカンザスシティの様子が眼前に浮かんでくる。たぶん、ほぼ初見での録音なのだろうが、さすがにベニー・カーターという大御所のスコアなので、全員緊張して、びしっと吹き込んでいる。カンザスシティということで、ほとんどブルースかと思ったらさにあらず、じつにうまくひねった曲ばかりで、ベニーの作曲者・アレンジャーとしての才能を感じる。このアルバムからは、ロードで演奏されるレパートリーは採用されなかったが、そのことが逆に本作の各曲の結びつきと言うか不可分さを物語っている。楽しく聴ける作品ではあるが、一本ぴーんと芯の通った傑作。

「BASIE AT BIRDLAND」(ROULETTE YW−7842−RO)
COUNT BASIE

 これもルーレット時代の代表的ライヴで、曲目的にも「リトル・ポニー」とか「セグエ・イン・C」「ディスコモーション(ベイシー)」「ブルース・バックステージ」「ブリー・ブロップ・ブルース」「ワーリー・バード(ジョン・ヘンドリックスのスキャット入り)」「グッド・タイム・ブルース」などずらーーーーーっと名曲が並んでおり、メンバーもいいのだが、これは個人的な好みだが、この時期のアルバムはテナーにバッド・ジョンソンが入っているのでちょっと敬遠してしまう。バッド・ジョンソンはスウィング時代から活躍する名手だが、私にとっては「大味」である。「大味」と「豪快」は紙一重で、バッド・ジョンソンは紙一重を通り越してしまって、フレーズもアーティキュレイションもかなり粗雑に思える。これは彼のリーダー作を聴いてもそうなので、もともとそういう資質なのだろう。本作でも、音がでかすぎて、「つぶし」になりかけている感じがある。まあ、ほかのメンバーはすばらしいので、バッド・ジョンソンのプレイが気にならないひとには、かなりいけるんじゃないでしょうか。

「BASIE IN SWEDEN  RECORDED LIVE IN CONCERT」(ROULETTE YW−7844−RO)
COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA FEATURING LOUIS BELLSON ON DRUMS

 これまたルーレット期の代表ライブ。スウェーデンでの演奏だが、ドラムがルイ・ベルソンであるために、微妙に(露骨に?)ノリがちがっている。たまに聴くとよいが、やはりソニー・ペインとは雲泥の差だ。もちろんルイ・ベルソンはすばらしいビッグバンドドラマーなので、レギュラーとポッと入った代役では譜面のこなれかたもまるで違うだろうから、しかたないのかもしれないが、やはり時々「あれ?」と思う箇所がある。エルヴィンのかわりにロイ・ヘインズが入ったコルトレーン4みたいに、そういった微妙なノリの差をたまに聴いて楽しめばいいのかもしれないが……。曲は「リトル・ポニー」や「フー・ミー」をはじめ、おなじみのナンバーばかりです。

「COUNT BASIE AT NEWPORT」(VERVE MV4020)
COUNT BASIE WITH JIMMY RUSHING,LESTER YOUNG,JO JONES,ILLINOIS JAQUET AND ROYELDRIDGE

 すごく楽しいアルバムで大好きだ。副題が長すぎるが、冒頭のジョン・ハモンドのMCもめちゃめちゃ長い。なんでこんなもん入ってるんやろなあ。全部カットすればかなり収録時間がのびたはずである。ベイシーオーケストラだけの演奏は一曲目の「スウィンギン・アット・ニューポート」だけであとは全部なんらかのゲストが入っている。一曲目の先発ソロはウエスのテナーで、スウィングっぽいダーティートーンを使ってのブロウと十六分音符を駆使してのバップなフレーズを織りまぜて、めちゃめちゃうまいが、このソロの最中にどこのどいつかわからんが、たぶん「行け行けーっ」みたいなことを叫んでいるのだろう、ものすごくうるさいおっさんがいる。ジョー・ジョーンズか? とにかくこの曲が終わるまでずーーーーっと叫んでいるのである。ジョー・ニューマンのソロをはさんで、フランク・フォスターのソロになるが、非常に端正で、歌いまくっている。ソニー・ペインのドラムが炸裂し、ラストのテュッティの迫力はさすがである。二曲目は「ポルカ・ドッツ・アンド・ムーン・ビームス」だが、またまたジョン・ハモンドが出てきて、いらんことをしゃべる。ジミー・ラッシングの紹介をしていて、途中で、「おおああっ、つぎはレスター・ヤングでした」とあわてふためく。そして、曲がはじまってしばらくしてから「アンド・ジョー・ジョーンズ」とつけくわえる。最低やー。こんな部分、全部削れっ。レスターのソロは、もちろん全盛期とくらべてはいかんのだろうが、なんともいえないダルな雰囲気をかもしだして、ええ感じです。次は「レスター・リープス・イン」で、ヘッドアレンジではなく、かっちりと編曲されており、いろいろある決め事をレスターはちゃんとこなし、この速いテンポでもうまくノッて吹いているし、ホンクっぽく盛り上げる。悪くない。しかし、横でブロウブロウっと叫んでいるおっさんはいったい誰や。終わってからみんながなぜかゲラゲラ笑いあっているのもよくわからんなあ。B面にいくと、ジミー・ラッシングが登場し、手慣れたおなじみの三曲をシャウトする。このひとは衰えんなあ。どの曲もレスター・ヤングがけっこうたっぷり目のソロをするが、まあ歌伴なのでまあ軽く流した感じ。最後の「ワン・オクロック・ジャンプ」で、「フライング・ホーム・トゥ・ザ・ベイシー・バンド……」というアナウンスを受けてイリノイ・ジャケー(とロイ・エルドリッジ)が登場する。ふだんはテーマとして短く演奏されるこの曲だが、九分をこえるたっぷりした長さ。なんでこんなやりにくいキーでセッションをするのだろうか。昔のスウィング時代のジャズマンはどんなキーでも吹けたということかな。レスターの先発ソロは立派である。ジャケーは堂々たる風格で、余裕のブロウ10コーラスを繰り広げる(が、さほど盛り上がらない。たぶん、レスターもいることだし、あまり派手で下品なオーバーブロウは遠慮したのではないかと思う)。しかし、ずーっと叫んでいるおっさんは結局最後の最後まで叫んでいるな。

「COUNT ON THE COAST’58」(POLYDOR 38MJ3493/4)
COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA FEATURING JOE WILLIAMS

 もう垂涎というか、美味しすぎるアルバムで、出たときはほんと、あまりにうれしすぎてびっくりした。もともと第一集、第二集としてばらばらに出ていたのを、日本盤では二枚組にして、ジャケットもベイシーのきりっとした横顔のイラストですばらしい。とにかく、この豪華絢爛のメンバーが、当時のレギュラーなのだから、いかにこのころのベイシーバンドが鳴りまくり、ジャンプしまくり、シャウトしまくっていたかがわかる。これだけ美味しいメンバーによるライヴは、本作が出た当時は、音の悪い海賊盤を除くとほかになかったと思う。日本盤の帯には「まさにライブ版アトミック・ベイシーだ」みたいなことが書いてあるが、「アトミックベイシー」と決定的にちがうのは、テナーがロックジョウではなくビリー・ミッチェルであることで、私なら「まさにライヴ版ベイシー・イン・ロンドンだ」と言うだろう。え? 「イン・ロンドン」はもともとライヴ? 失礼しました。まあ、これだけメンバーがよくて、これだけレベルの高いライヴは、「ザ・コンプリート・ルーレット・ライヴ・カウント・ベイシー」は別として、「イン・ロンドン」と「ブレイクファースト・アンド・バーベキュー」ぐらいか。個人的な好みでは、本作がいちばん好きです。バードランドのエアチェックはたくさん出ているし、ほかにも「オータム・イン・パリス」とか「ザ・カウント・イン・イングランド」とかいろいろ好きなアルバムはあるが、やはりこのアルバムがいちばん衝撃的だった。百万言費やしても、たぶんこのアルバムの良さは伝えきれない。聴いてもらうのがいちばんである。聴いて。お願い聴いて。

「THE COMPLETE COLLECTION OF COUNT BASIE ORCHESTRA ON DECCA(1937〜1939)」(MCA RECORDS VIM−5501〜4)
COUNT BASIE

 この4枚組は、ベイシーオーケストラのもっとも初期の記録であり、メンバー的にもレスター・ヤング、ハーシャル・エヴァンス、ハリー・エディソン、バック・クレイトン、ディッキー・ウエルズ、アール・ウォーレン、ジミー・ラッシング、ヘレン・ヒュームズ……といったきら星のごとき即興演奏家を擁した時期の、珠玉の作品ばかりがおさめられている。とくにテキサステナーの元祖といわれるハーシャル・エヴァンスのソロはこのアルバムでないと聴けないので、めっさ貴重である。某サイト連載でも書いたが、ニュー・ベイシー以降の、かっちりしたアレンジ+LPサイズの録音になれた耳には、このアルバムの演奏は音も悪いし、アレンジはヘッドアレンジでシンプルきわまりないし、きわめて古くさく聴こえるだろう。私も最初はそうだった。学生時代、大枚を払ってこの4枚組を買い、聴いてみたが、うーん、なんのこっちゃ……という感じだったが、なにしろ高い金を払ったので元をとらねばならない。毎日毎日繰り返し聴いているうちに、しみじみと演奏が身体に染み込んできて、そのよさがわかるようになってきた。はっきり言って、この演奏のよさをわからずして、50年代以降のニュー・ベイシーの本質はわからないと言わせていただこう。なぜなら、きっちりしたアレンジで口当たりよく演奏しているニュー・ベイシーのバックボーンには、本作で聴かれるような、粗削りかつ異常にスウィングし、ジャンプしまくるカンサスシティジャズの精神がみなぎっているからだ。だから、オールド・ベイシーを聴かずして、ニュー・ベイシーはわからないのである。みんな、ぜったいええから、このアルバム(今は3枚組のCDででているらしい)を聴きましょう。

「COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA FEATURING LESTER YOUNG」(CBS/SONY 20AP1828)
COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA FEATURING LESTER YOUNG

 このアルバムの前作にあたる「レスター・ヤングの肖像」はめちゃめちゃ聴きまくった。聴いていると、70年まえにトリップしたような気になる……そんなすぐれもののアルバムだった。その続編である本作も、前作には負けるかもしれないが、非常にすばらしい演奏が詰まっている。まあ、このころのレスターに駄作なしですな。

「BASIE−STRAIGHT AHEAD」(MCA IMPULSE! MCA−29004)
COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA

 60年代ベイシーの傑作といわれているアルバムだが(68年吹き込み)、おそらくその理由は「譜面がほぼ全曲出回っている」ことにつきるのではないかと思う。学生バンドから社会人バンドまでおよそジャズのビッグバンドで演奏したことのあるひとでこのアルバムからの曲を一曲たりとも演ったことのないひとはいないのではないか。たしかにネスティコのええ曲が並んではいるが、個人的にはあまり好きではない。変なジャケットのせい 録音のせい? ロックジョウのせい?(ロックジョウはもちろん大好きなのだが、ベイシーのロックジョウ参加アルバムはなぜか嫌なのだった。そのせいか、同時期の「スタンディング・オヴェイションズ」や「ライヴ・アット・サンズ」も……)、ドラムのせい?(ハロルド・ジョーンズはけっして悪いドラムではないが……)とにかくなぜかピンとこないのです。でも、いちばん大きな理由は、学生のころ、ここに収録されている曲をやるためにひたすら聴きすぎた、ということではないか。耳にタコがたぶんできたんだと思います。「マジック・フリー」とか、今聴くと、ほんとしんどいって。

「BLUES BY BASIE」(PHILIPS 15PJ−3)
COUNT BASIE 1942

 A面はベイシーコンボの演奏。あのオール・アメリカン・リズム・セクションによる演奏で、4曲だけ、バック・クレイトンとドン・バイアスが加わっている。なんと全部ブルースで、タイトルの「ブルース・バイ・ベイシー」もなるほどと納得(本当は純粋なブルースでないものもまじっているが)。B面は、ほぼ同時期のビッグバンド。テナーは、バディ・テイトとドン・バイアス。

「COUNT BASIE/V−DISC 1944−45」(NIPPON PHONOGRAM 15PJ−32)
COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA

 ベースがウォルター・ペイジにかわってロドニー・リチャードソンという人になり、ドン・バイアスやポール・バスコムが代役をしていたレスター・ヤングの席に本人が返り咲いている。B面になると、プレスのかわりにラッキー・トンプソンが入っていて、がっかり。ドラムはシャドウ・ウィルソン。でも、じつはA面B面ともに、すばらしい演奏なのである。ジミー・ラッシングも大活躍で、あの「テイク・ミー・バック・ベイビー」も演やってます。

「COUNT BASIE AND THE KANSAS CITY SEVEN」(IMPULSE! STEREO A−25)
COUNT BASIE AND THE KANSAS CITY SEVEN

 かつてのベイシーのピックアップコンボを、60年代に再現したアルバム。ベイシーとインパルスというのもちょっと違和感があるが、内容的にもかなり違和感がある。メンバー的にはいうことなしで、サド・ジョーンズ、ウエス、フォスター、エリック・ディクソンというホーンに、ベースはエディ・ジョーンズでドラムはソニー・ペイン。すごくスウィングする小粋なセッションではあるが、なぜかウエスとディクソンはほとんどテナーを吹いておらず、フルート(とクラリネット)ばっかり。そして、フォスターもテナーとクラを使い分けており、なんやねん、これ。もちろん悪くない。悪くないどころか、めちゃいいんだけど、エリック・ディクソンの変態テナーが聴きたかったなあ。

「COUNT BASIE WITH ILLINOIS JAQUET」(SAGA RECORDS SAGA6932)
COUNT BASIE AND HIS ORCHESTRA

 ベイシー時代のジャケーのライヴが聴けるアルバム。A面はハリウッドのクラブ、B面はニューヨークのレストランでのライヴのエアチェック。オールド・ベイシーだが、メンバーは超豪華。有名どころだけでも書き出してみると、ラッパはエド・ルイス、アル・キリアン、ハリー・スイーツ、ジョー・ニューマン、スヌーキー・ヤング、エメット・ベリー、ボントロにディッキー・ウエルズ、アルトにアール・ウォーレン、プレストン・ラヴ、ジミー・パウエル、ルディ・ラザフォード、そしてテナーにイリノイ・ジャケーとバディ・テイト、バリサクにジャック・ワシントン、ベースになんとウォルター・ペイジ、そして、ドラムがジョー・ジョーンズになんとなんとバディ・リッチ、ボーカルにジミー・ラッシング! いやー、オールスターですな。そのなかでも気を吐くのはもちろんイリノイ・ジャケーとバディ・リッチで、ジャケーといえばライオネル・ハンプトンというイメージが定着しているだろうが、ベイシーでも野太い音色でブロウしまくり、フリーキートーンも駆使して吹きまくっている。バディ・リッチのドラムは、もう言うことなし。音もかなりいいし、一聴の価値あるアルバム。単純なリフとカウンターメロディの組み合わせで、これだけ迫力あるサウンドになるのは、やっぱりソロイストがいいからでしょうね。

「TIMELESS COUNT BASIE」(SAVOY JAZZS VJ17131)
THE COUNT BASIE ORCHESTRA DIRECTED BY FRANK FOSTER

 なんでこのアルバムを買ったのか、今となってはまったく思い出せない。たぶん「ロング・リヴ・ザ・チーフ」を中心に、そこにいくつかのテイクを足したアルバム。正直、サドが率いていたころのベイシーバンドよりも、ベイシーらしさがあって、フォスターバンドのほうが私は好きだが(ドラムが誰であるかが大きなファクター)、でも、やっぱりベイシーがいないベイシーバンドを積極的に聴こうという気持ちにはならんなあ。逆に、オリジナルを知らない曲、たとえば歌伴の曲のアレンジなどはフォスターらしくてすごく良い(ボーカリスト(カーメン・ブラッドフォードという女性)をフィーチュアした「ブリング・オン・ザ・レインドロップス」という曲)。ケニー・ヒングやエリック・ディクソンのソロもいいし、聞きどころは多いのだが、まあ、これを聴くならベイシーがいるころのベイシーバンドを聴くなあ……とは思う。なかなかむずかしいです。