わたしの親子丼の師匠は高校の同級生だ。
彼女がお弁当箱にしていたタッパーにただ親子丼だけがどーんと入っていた姿をみて
ひとめぼれした。
北海道の私立高校で、高校生の一人暮らしは珍しくない。
彼女にとって料理はもちろん生活の一部だから、お弁当を作ることも慣れっこだ。
いとも簡単そうに言う彼女と、ひとくちもらった親子丼のうまさに
ぬくぬくと家にいて親の作った料理を食べて、ろくに家事をしたことがないわたしは
自活の味、生活の味を感じて、痛烈なるカルチャーショックを受けた。
だいたいわたしの家は丼ものが食事に出てきたためしがなかったので知らなかった。
丼ものが一食のメインになり得るという事実、
そしてこれほど簡単で、これほどうまいという事実。
何もかもが新鮮だった。
これからはじまるわたしととり肉とたまごの深い付き合いを作ってくれたのは、彼女だ。
教室のカーテンがときおりふく風にゆれて、太陽をのぞかせる。
そんなふつうの昼休みの出来事だった。
次回:ワカサギ丼で立ち直った傷心 in summer