執筆に当たっては万全を期しましたが、どうしても完璧とはほど遠いので、再版に際して以下のように追加訂正を行いました(但し、誤字、誤植の類については、一々触れないことにします)。
 しかしながら、それでもなお誤り、あるいは追加すべき事項が見つかりましたので、それらについては未追加・未訂正の項に記しておきます。第3版出版の機会がありましたら(あるように願っているのですが、なかなか困難)、そのときに訂正いたします。
 また、本書で意図的に簡単な記述で済ましたり触れなかったりした項目の一部については、「話題」のページに記しておきましたので、そちらの方も参照していただければ幸いです。
 なお、読者の方で誤りや追加すべき点についてご意見がありましたら、どうぞご意見をお寄せ下さいますよう、お願い申し上げます。


追加訂正済み

口絵−図17-2  図3-1ヘルメット潜水器  空気塞栓症  タンク内の火災  点滴事故  シャローウォーターブラックアウト  


未追加・未訂正

水素 気胸 内耳圧外傷 減圧理論 ガス層の形成 潜水後の低圧曝露 新減圧表の動向 熱伝導 タイタニック 素潜り 低体温治療 鮫よけ


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追加訂正済み

口絵−図17-2

口絵−図17-2 は皮膚の発赤(ほっせき)を呈した1型減圧症ですが、初版では背中の発赤がはっきりしていませんでした。それをよりはっきりした写真に替えました。地図状に僅かに浮き上がって赤くなっている病変部がよりはっきりわかると思います。

図3-1ヘルメット潜水器 22ページ   

初版では「面ガラスを外した状態」としていますが、この写真では面ガラスは外しておりません。したがって、面ガラス云々の記載は削除しました。

空気塞栓症 102ページ

潜水中の意識障害の原因として、空気塞栓症を常に考慮しておかねばならないことを、脚注として強調しました
なお、話題のページでも空気塞栓症について詳説していますので、所用のかたはそちらもご覧になって下さい。

タンク内の火災   156ページ

本書出版後、高圧タンクで患者を治療中の火災事故が連続して発生しました。あらためて安全管理が求められているので、そういう事例が生じたことを脚注で記しました。

点滴事故    157ページ

高圧タンク内で点滴中に空気が静脈内に入った事故例のソースを記しました。

シャローウォーターブラックアウト 197ページ

近年シャローウォーターブラックアウトという言葉がよく使われるようになりましたが、この言葉の由来を正しく理解して使用されているとは必ずしも言えないので、その事情について触れました。
 すなわち、潜水医学の標準的な教科書とも言える「The Physiology and Medicine of Diving」の「潜水と呼吸」の項目を執筆している米国のランフィェー教授は、この言葉が使用された最初の事例はイギリス海軍において閉鎖回路型スクーバ潜水器を使用して潜っているときに生じた意識消失で、その原因として炭酸ガス中毒が挙げられており、近年素潜り中に低酸素となって生じる意識障害の原因とは異なるとしています。そして、用語の由来を正しく認識して使用すべきことを再三にわたって述べています。
 たしかに、シャローウォーターブラックアウトという言葉の漠然とした語感からこれを素潜りにおける意識消失に用いてしまうのも判らないではありませんが、少なくとも専門的に潜水医学を論じるのであれば、歴史的な経緯を無視するわけにはいかないでしょう。素潜り中の意識障害をどうしても英語で表現したいのなら、たとえばハイポキシックブラックアウト(hypoxic blackout)とでもすればよいのではないでしょうか。
 ところで、さらに混乱することですが、英海軍のマイルズ軍医少将の手になる邦訳「潜水医学入門」では、シャローウォーターブラックアウトは空気ではなくて酸素を呼吸しているときに起こることが多いことから酸素と何らかの関係があるとし、oxygen syncope(酸素失神)という用語を提唱しています。そして、その原因の一つとして炭酸ガス中毒とは逆に、酸素を呼吸している場合には過呼吸のときと同じように炭酸ガスが過剰に排出されることが多いために痙攣発作等を起こすことにあるのではないか、としています(マイルズの説は本書の再版判でも未だ記していません)。

 これではますます何がなんだかわかりませんが、詳細が判明した場合には後ほどお知らせいたします。

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未追加・未訂正

水素 気胸 内耳圧外傷 減圧理論 ガス層の形成 潜水後の低圧曝露 新減圧表の動向 熱伝導 タイタニック 素潜り 低体温治療 鮫よけ


水素  15ページ

不活性ガスの項目の末尾に、「酸素や水素は活性ガス云々」と記していますが、水素を消して代わりに炭酸ガスを入れて下さい。確かに水素は他の分子と容易に反応しますが、他の分子と反応する窒素も不活性ガスとして扱われるというのと同じ意味で、この場合は不活性ガスに分類されるべきなのです。詳しくは引用文献も記載していますので、拙稿「飽和潜水における不活性ガス」(日本高気圧環境医学会雑誌30:171-175,1995)を参照して下さい。

胸 87ページ

気胸を合併している場合でも再圧治療を慎重に行うことによって特に脱気することなく実用上は充分満足のできる結果が得られる、という内容の論文を読みました。ただ、当方の整理ミスでそれを示した論文のメモを失いましたため、その根拠を明示できないのが残念です。ご存じの方がおられましたら、ご教示下さい。(判明しました。それはC.G.Daugherty: Inherent unsaturation in the treatment of pneumothorax at depth. UBR17:171-177,1990です)

内耳圧外傷  94ページ

耳鼻科の専門医に訊いたところ、内耳圧外傷は潜降時よりも浮上時に発生することが多いだろうと言っていました。その根拠として、内耳障害を反映する眼振といって眼球の振動を表す指標を潜降時と浮上時の双方でとると、あきらかに浮上時の方が大きい振動を示す、ということをあげていました。
 
また、名古屋大学柳田名誉教授も自信をもって浮上時に発生すると言っておられます。
 
欧米の潜水医学のテキストのうち、耳鼻関係の箇所は殆ど全てファーマー教授によって記され、内耳圧外傷は潜降時に発生することが常識のようになっていますが、どうやら一考の余地がありそうです。

減圧理論  112ページ

全ての減圧理論を本書のような入門書に記すのは不可能であるにせよ、ホールデーン教授によるいわゆる古典的減圧理論のみを重点的に取り上げたことは、舌足らずでした。特にヒルズ(B.A. Hills)教授の著書に言及しなかったのは当方の勉強不足でした。これは極めて難解な本ですが、減圧理論を学ぼうとするものにとっては必読の書でしょう。
 
なお、ヒルズの理論を含め様々な減圧理論を概観した総説「減圧をめぐる諸問題」が近く印刷されますので、所要の方はそちらを参照して下さい。古典的減圧理論そのものの成り立ちについては、日本高気圧学会雑誌に、「古典的減圧理論の展開」3部作として拙稿を発表しておりますので、そちらも参照していただければ幸いです。
 また減圧理論については話題の項でも触れていますので、ご覧になって下さい

ガス層の形成  120ページ

脚注に、船のプロペラの後ろにできる気泡形成と基本的に同じ、と記しましたが、気泡の中身が水蒸気とガスということで、正確な表現ではありませんでした。プロペラの後ろに出来るのは、中身が水蒸気の気泡です。

なお、ここではガス層としましたが、正確にはガス相の方がいいかもしれません。

潜水後の低圧曝露  133ページ

潜水後の低圧曝露は何も航空機の搭乗に限りません。関東近辺で近年問題になっていることとして、伊豆半島の西側、いわゆる西伊豆で潜った後、ドライブで箱根や御殿場を越えて帰った後に減圧症に罹患することが、東京医科歯科大学の山見医師らによってよく報告されています。十分注意して下さい。

新減圧表の動向  134ページ

米海軍の標準減圧表についての再評価は同海軍のウェザスビ大佐らによって精力的に進められ、新しい減圧表の元となる報告書も公開されています。しかし、それを海軍の制式減圧表として採用すべく諮問委員会に諮ったところ、主に現場サイドから、減圧時間が長過ぎる、等の反対論が出現し、沙汰やみの状態になっているそうです(ウェザスビ博士及びヴァン博士からの情報による)。
 このことは、減圧表があくまで実用潜水のための手段であるに過ぎないという側面をよく表していると思います。なお、減圧表の評価等については、近いうちに印刷される拙稿「減圧をめぐる諸問題」でやや詳しく論じていますので、参照して下さい。

熱伝導  172ページ

ここの記述は完全に間違っています。申し訳ありません。10行目の中程から以降、「ヘリウムは比熱が小さいので」を消して下さい。替わりに、13行目の中程、「ヘリウムの方が少なくてすむのです。」に引き続いて「詳しくは16頁及び文献をご覧になって下さい」を入れて下さい。
 ヘリウムの比熱は空気よりも大きくなっています。しかし、結局のところは重さの関係で、ここで言っているとおり、ヘリウムを呼吸した方が熱の損失は少なくなります。

タイタニック  174ページ

 艦船の遭難事故の死因としての低体温症について、ちょっとしたエピソードを加えておきます。
 イギリスのホワイトスターライン社の大西洋横断定期客船タイタニックのことは映画で一躍有名になりましたが、実はここでも遭難者の死因の過半はいわゆる溺死よりも低体温症によるものであろうと言われています。タイタニック号に乗客全員が乗り移ることのできるだけのボートが搭載されていなかったことは確かに事実ですが、それでもって死亡原因を溺死にする訳には行きません。というのは、近くを航海中のカルパチア号が遭難現場に到着したのは事故のわずかに50分後で、その上、当時の海面は穏やかでした(ただし、水温は0度に近いのですが)。しかも、船に備えられていた救命胴衣は船客や乗員数を遙かに上回る3560個を数えていました。ですから、低体温が関与していないのならば多数を救助できたはずです。しかし、現実は、その時までにまだ海中にいた1489人の人は誰一人として救助することは出来ませんでした。このことを合理的に説明できるのは低体温症以外にありませんが、人間の先入観の強固さからか、公式記録では死因は全て溺死によるものとなっているそうです。
 ところで、ここで又ちょっと脇道にそれます。タイタニックは英語では「SS Titanic」と書かれますが、このSSは何を表すかご存じですか?これは蒸気船Steam Shipの略です。最近では蒸気船は殆ど姿を消し大多数はディーゼルエンジンで動いていますが、このときはMoter Vesselから、冒頭にMVと記します。軍艦にはまた別の表記法があります。イギリス海軍の艦艇はHMSを艦艇名の前につけますが、これはHer Majesty's Shipの頭文字のことです(時代によってHerになったりHisになったりします)。「女王陛下のユリシーズ号」として訳されている海洋文学の名作がありハヤカワ文庫として文庫本にもなっていますが、この女王陛下はHMSをそのまま訳したものです。しかし、この訳は果たして正しい訳でしょうか。というのは、今でこそ英国の国家元首はエリザベス女王ですが、当時はたしか国王の時代だったと思います。そうすると、正しくは「国王陛下のユリシーズ号」になります。また英字新聞では空母エンタープライズをUSS Enterpriseと記しますが、このUSSは誤植ではありません。United States Shipの略で、一般商船には用いません。では、わが海上自衛隊の艦艇はどのように表記するのでしょうか?海上自衛隊はMaritime Self-Defense ForceなのでMSDF Shipなのでしょうか。違います。そんなに長たらしい表記ではなく、JDSを冒頭に附けます。根拠は簡単ですから考えてみて下さい。

素潜り 192〜3ページ

素もぐりのことを「閉塞潜水」ということもある、としていますが、「閉息潜水」の間違いです。
また、最近話題になっている深い深度まで潜る素潜りの注として「その意義も見いだせない」と記しましたが、若干、言い過ぎであったかも知れません。このような深深度の素潜りでは以前には想像も出来なかったような生理学的変化が認められるようです。但し、危険であることにかわりはありません。

低体温治療  204ページ

最近、生体を低体温に維持することによって、重症患者の救命率あるいは予後が飛躍的に向上することが医学誌のみならず一般誌でも取り上げられ脚光を浴びています。したがって、ここに引用の文献では人工的に低体温にするのが溺水の治療にあまり効果がないように記されていますが、将来変わる可能性があります(もうすでにそのような論文が発表されているのかもしれません。その場合、是非ご教示下さい)。

よけ  217ページ

本書出版後、ダイバーの周囲に弱い磁場を作ることによって、鮫を遠ざける装置が南アフリカで開発されました。日本では日本海洋で目下評価試験中で、なかなか有効なようです。

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