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診 断

主な診断および簡単なコメントを記しただけで、完全なガイドではありません。
また、正確な医学用語に従った記述でもありません。
例えば、一見意識消失に見えるものは意識消失の項に記しています。

意識障害・意識消失

1.空気塞栓症
浮上直後に発生した意識障害、特に意識消失にはまず空気塞栓症を考える。典型的にはパニックなどによって急速浮上した場合に起こるが、通常にゆっくり浮上しても発症することが多い。また症状が変化することが多いので、一見軽快しているような場合でも油断できない。それまで健康な若い人に発生した場合は、心筋梗塞等よりもまず空気塞栓症を考えるべきである。再圧治療が著効するので、頭に入れて置いてほしい。
2.減圧症
意識障害・意識消失を来すような減圧症は減圧表を大きく無視して無謀な潜水を行った場合に限られる。
3.過換気症候群
正確には意識障害ではないが一見意識障害のようにみえる。それまで健康な人が苦しみだし、呼吸困難としびれを訴えれば、まず過換気症候群である。
4.心筋梗塞、脳血管障害等一般の疾病
高齢者や糖尿病等の基礎疾患を持った人の場合、心筋梗塞などに罹患することが多い。
5.低酸素症(溺水を含む)
6.酸素中毒
意識障害よりも、いきなり痙攣発作で発症することが多い。
7.一酸化炭素中毒
8.炭酸ガス中毒
9.低体温症
厳寒期に落水した場合等に見られる。潜水の現場での低体温症は例えば飽和潜水において加温に失敗したとき等に生じる。

痛み(四肢)

1.減圧症
 もっとも一般的な減圧症である。再圧治療によって通常は完治する。減圧表に従った潜水を行った場合でも発症し得る。痛みの種類はさまざまであり、局所に固定することもあれば、数カ所に移動することもある。痛みの程度も様々である。また、痛みの場所も関節に限らず、筋肉部のことも多い。皮膚のかゆみや発赤(ほっせき)を伴っていれば、まず減圧症であるが、痛みの性状のみから減圧症であると確診する事は困難である。したがって、浮上後に生じた痛みはまず減圧症を考えなければならない。不十分な治療が骨壊死発症の原因になるとする考えもある。浮上から発症に至る時間は原因となる潜水によって左右される。一般に短い潜水では浮上直後に発症し、長時間にわたる潜水では発症までに時間がかかることが多い。飛行中に発症することもある。
2.骨壊死
骨壊死による痛みは慢性的なものであり、浮上後に新たに発症するものでもない。

かゆみ

1.減圧症
浮上後のかゆみは減圧症である可能性が強い。痛みあるいは皮膚の発赤を伴う場合はほぼ断定してよい。総じてかゆみの強さと重症度は相関している模様である。かゆみのみを訴える場合、再圧治療しない考えもあるが、私見では治療すべきだと思う。
2.ドライ潜水後の皮膚からの気泡の出現
この場合のかゆみは一般的な減圧症とは言えないが、明確にそれと鑑別するのは困難である。ドライ潜水(体の皮膚が直接水に接しない環境圧潜水)の場合、皮膚のまわりから直接ガスが皮膚に進入し、それが減圧に伴って皮膚の表面で気泡化することによってかゆみが生じるといわれる。

胸痛

1.肺圧外傷
浮上に伴って肺内の容積が増加し、肺が過膨張になって肺胞が障害を受けた状態である。胸痛、発熱、血痰等を訴え、白血球の著明な増加を見ることが多い。ごく僅かの深度(1m前後)からの浮上でも生じる。典型例は頸部の皮下などに空気がたまって皮下気腫の状態になる。手で患部を押すと新雪を握りしめたような感触を覚える。軽度の際は、CTなどで調べないとわからない。重要なことは、空気塞栓症を来していないことを確認することである。肺圧外傷だけの場合、保存的治療でよい。
2.減圧症(チョークス)
重篤な減圧症で、肺動脈に多量の気泡が循環したために生じる。呼吸困難を伴うことが多く、速やかに再圧治療しなければならない。規定の減圧表を大きく無視して潜った場合に出現することが多いが、必ずしも断定できない。

痙攣発作

1.空気塞栓症
空気塞栓症の場合、痙攣発作よりも意識消失を来すことが多いが、痙攣発作も稀ではない。再圧治療後に痙攣発作を来すこともある。
2.減圧症
痙攣発作を来す減圧症は重症型で、減圧表を無視した無謀な減圧を行った場合に発症する。
3.酸素中毒
酸素分圧の高い呼吸ガスを呼吸して潜っているときに発症する。具体的には、深い深度の空気潜水、閉鎖あるいは半閉鎖回路型の混合ガスないし純酸素を呼吸して潜る潜水、ヘルメット潜水中の酸素を用いた不活性ガスの洗い出し中などに発生する。再圧治療中に発症することもある。
4.過換気症候群
一見痙攣発作様に見えることもある。それまで健康な人が突然呼吸困難や手のしびれを訴え、手指を反らしている場合、ほぼ過換気症候群であると断定してよい。

血痰

1.肺圧外傷
胸痛を訴え、血痰を呈することがある。
2.空気塞栓症
空気塞栓症の場合、肺圧外傷を合併していることが多いという意味から、血痰を呈することがある。
3.肺減圧症
重症の肺減圧症の場合、肺が冒されていることから、血痰を呈してもよいと思われるが、確信はもてない。
4.副鼻腔圧外傷
副鼻腔スキーズによって副鼻腔内に出血した血液が、血痰様に見えることがある。

呼吸困難

1.過換気症候群
それまで健康な人が突然呼吸困難を訴え、しびれを伴っている場合、過呼吸症候群である可能性が極めて高い。
2.減圧症(チョークス・肺減圧症)
チョークスとして知られる重症型の減圧症である。一見して重篤である。浮上まもなく呼吸困難を訴えた場合は、このタイプの減圧症を常に考えておかなければならない。

耳痛

1.圧外傷
鼓膜等の障害によって生じる。
2.外耳炎
飽和潜水等の長期間におよぶ潜水において見られるが、通常の潜水でも出現する。痛みは特徴的で耳たぶを引っ張ると痛みが著明に強くなる。
3.非特異的
口に合わないレギュレータを長時間口にくわえていた場合、アゴや耳の痛みを訴えることがある。

しびれ

1.過換気症候群
それまで健康な人が突然しびれを訴えた場合、特に呼吸困難を伴っていれば、過換気症候群である可能性が極めて高い。
2.減圧症
知覚障害を呈する脊髄型減圧症の場合に、しびれを訴えることがある。
3.空気塞栓症
しびれを訴える空気塞栓症は稀であるが、皆無とは言えない。

耳鳴

1.内耳圧外傷
無理な耳抜きをした場合などに生じる。素潜りにおいて起こることが多い。
2.内耳減圧症

頭痛

1.炭酸ガス中毒
頭痛は炭酸ガス中毒の腫瘍症状である。重作業の潜水に於いて起こることが多いが、スクーバ潜水でも発症し得る。炭酸ガス中毒は、減圧症、酸素中毒及び窒素酔いに罹患させやすくする。
2.一酸化炭素中毒
3.その他
頭痛は他の多くの疾患に於いて認められるので、列挙は差し控える。

知覚障害(四肢)

1.減圧症
脊髄型減圧症では下肢に知覚障害を呈することが多い。減圧症でもっともしばしば認められる疾患の一つである。
2.空気塞栓症
理論的には空気塞栓症でも知覚障害を来してもよいが、実際にはこれを主に訴えることは稀ではないかと思われる。
3.その他

難聴(聴力低下)

1.内耳圧外傷
無理な耳抜きをした場合などに、内耳圧外傷を呈することがある。この場合、感音性難聴である。ダイバーの職業病の一つである聴力低下の原因でもある。
2.中耳圧外傷
鼓膜や耳小骨の損傷によって生じる。無理な耳抜き等によって生じる。この場合、伝音性難聴である。内耳圧外傷と同じく、ダイバーの聴力低下の要因の一つである。
3.内耳減圧症
減圧症によって難聴を呈するのは少ないと思われるが、皆無ではない。減圧症の場合、むしろめまいや耳鳴を訴えることが多い。

吐き気

1.めまいと同様の場合
回転性のめまいを呈する状態では必然的に吐き気を訴えるので、そちらを参照されたい。
2.血圧低下、その他
非特異的な血圧低下等によって吐き気を訴える。

鼻出血

1.副鼻腔圧外傷
副鼻腔スキーズによって副鼻腔内に出血し貯留した血液が、浮上に伴って鼻出血となって流れ出る。
2.非特異的鼻出血
鼻腔粘膜は敏感で、些細な刺激によって出血する。冷たい水なども原因となり得る。

皮膚の発赤

1.減圧症
地図や星形の発赤を呈する。かゆみや痛みを伴っていれば、減圧症である可能性が高い。
2.圧迫
ベルトや潜水衣あるいは面マスク等が体に押しつけられて発赤を呈する。発赤の部位あるいは形状によって推定できる。

疲労

1.一般的な疾患あるいは疲労
2.減圧症
疲労が重症の減圧症の先駆症状である可能性が成書に記されている。

歩行障害

1.減圧症
2.空気塞栓症
減圧症、空気塞栓症いずれの場合も、運動麻痺を来せば、歩行障害を呈する。軽傷の場合、スリッパが敷居に引っかかるなどの症状を呈し、見逃されている場合がある。
3.骨壊死
関節の痛み等のために歩行障害を呈する。
4.内耳障害
片側の内耳が冒されればめまいを来すので、歩行障害を訴える。

むくみ

1.減圧症
一般の減圧症でも軽度のむくみを呈することがあるが、著明なむくみ(浮腫)を主訴とする減圧症もある。それはリンパ型減圧症と呼ばれるもので、アゴや肩などが浮腫状になる。一般診療で診断に苦慮する場合がある。それほど稀なタイプの減圧症ではないので、留意されたい。
2.空気塞栓症
空気塞栓症の原因となる肺圧外傷から著明な皮下気腫を来たし、それが浮腫と誤認される場合がある。
3.一般的な疾病

麻痺(四肢)

1.減圧症
2.空気塞栓症
減圧症、空気塞栓症いずれの場合も運動神経の障害によって、四肢の麻痺を呈することがある。
3.神経症
正確には麻痺ではないが、強いストレスを受けた場合等に麻痺様の症状を呈することがある。甚だしい場合は意識障害と見まがう。

耳鳴り

1.内耳減圧症
2.耳圧外傷

めまい

1.内耳減圧症
2.内耳圧外症
めまいを呈するのは減圧症の方が多い。
3.酸素中毒
酸素中毒に於ても、めまいを呈することがあると記載されている。
4.alternobaric vertigo (圧変動に伴うめまい)
潜水中の圧変化に伴ってめまいを訴えることがある。静かにしていれば、そのうちに収まる。
5.中耳の刺激
片方の中耳に冷水を入れたり、潜水中に鼓膜穿孔によって水が中耳内に進入したりすると、強いめまいを呈する。

腰痛

1.一般的な疾患
2.減圧症
腰痛として発症する減圧症がある。重症の場合が多い。