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●聖徳太子傳暦(しょうとくたいしでんりゃく) 豆知識

成立の時期と選者について


 原典には 「平氏撰」 とのみ記されていて、撰者の姓名を知ることができません。 そこでさまざまな説があります。
 古くは法隆寺の僧聖誉(しょうよ)による「聖誉抄(伝暦の注釈書)」に、蔵人の平基親(たいらのもとちか)平季貞(たいらのすえさだ)が撰述したとあり、また太子存命中に太子に仕えていた平群翁麿(へぐりのおきなまろ)とする説、桓武天皇の皇子で平家の祖の一品式部卿葛原親王(かずらはらしんのう)とする説があります。 また近年では菅原為長本の「伝暦」奥書きにより、蔵人頭藤原兼輔(すがわらのかねすけ)とする説もありますが、大勢の支持を得るにはいたっていません。 今のところ十世紀前半頃に成立したと考えらていますが、撰者は不明というところです。


内容について


 太子を救世観音の生まれ変わりとする、いわゆる「聖徳太子伝説」の集成です。 あきらかに史実とはいえませんが、なぜ太子が聖人にしたてあげられたのか、あるいはしたてあげる必要があったのか、その時代背景を考えることにより、なにか見えてくるものがあるようです。


 太子生誕の話は同じく馬屋(羊小屋)で生まれたイエス・キリストとの類似が読み取れます。 中国の唐には「景教(けいきょう)」と呼ばれたキリスト教ネストリウス派が伝来していましたから、遣唐使などによってその知識がもたらされた可能性も否定できません。 また太子の生涯をみるとなぜか「馬」というひとつのキーワードが浮かんできます。 仏教公伝・聖徳太子の生没年にも諸説ありますが、有力とみられているものを並べてみると次のようになります。


    仏教公伝:欽明天皇七年(538)戊午(つちのえ・うま
    生年  :敏達天皇三年(574)甲午(きのえ・うま
    没年  :推古天皇三十年(622)壬午(みずのえ・うま


 そして屋の前で生まれた厩戸皇子。 伝暦に現れる愛「甲斐驪駒(かいのくろこま)」。 この驪駒(くろこま)が太子に献上されたのが(当然というべきでしょうか?)推古六年戊午(つちのえ・うま)の年。 おっと、うっかり大事な人物を忘れそうになりました。 太子とともに推古朝をささえた 蘇我子 がいますね。 これはいったい何を暗示しているのでしょうか。 いったい「馬」がどうしたというのでしょう。 ここまで馬が出揃うと、もはや出来すぎで、「すべては虚構である。聖徳太子などという人物はこの世に存在しなかった」と言いたくもなります。 このあたりは下記のページがわかりやすく解説してくれています。


 公開公演「聖徳太子は実在するか」 / 元青山学院文学部教授 石田尚豊氏 による公演記録
     主催:青山学院校友会千葉県東葛支部
     後援:松戸市教育委員会
     http://www.intership.ne.jp/~aoyama/shohtoku-taishi-ishda.htm


 また「書紀」や太子の一級資料とされる「上宮聖徳法王帝説」なども読み合わせてみると、秦川勝(秦河勝・はたのかわかつ)をはじめとする秦氏と上宮家との関連もほのかに見え隠れします。 繰り返しますが、なぜこのような伝説が作られたのかその謎を考えることによって、その時代の真実が見えてくるのかもしれません。 


<底本>
 ・聖徳太子傳暦 / 寛永五年(1628)刊本
    茨城大学附属図書館 菅文庫江戸後期史学関係総合データベース
     http://www.lib.ibaraki.ac.jp/kan-db/kan-title-KJPEG.html
     伝暦は江戸時代になって一般にひろく流布されました。 これはその中でも最も古いとされる寛永年間の刊本です。 
     幣サイトのページでは省略しましたが、底本の下巻奥書に次のように記してあります。

       聖徳太子傳暦巻下
        右太子傳者於和州法隆寺一校畢
           寛永五年八月日 板木屋勝兵衛開板
     



<参考WEB・データ>
 ・聖徳太子傳暦 / 底本:楊雲萍文庫藏 古活字版『聖德太子傳暦』
    久遠の絆 / 往古之追慕 管理人:浦木裕氏
     http://applepig.idv.tw/kuon/furu/text/seitoku/denreki.htm
     上記URLの電子TEXTの提供をはじめ、浦木裕氏には多くの情報をいただきました。
 ・聖徳太子傳暦譯解 岡田諦賢 遍 / 哲学書院
    国立国会図書館 近代デジタルライブラリ
     http://kindai.ndl.go.jp/BIBibDetail.php


<参考書籍>
 ・厩戸皇子読本 (現代語訳「聖徳太子伝暦」)
    藤巻一保 著 / (株)原書房 刊
 ・續羣書類従 第八輯 上 / 聖徳太子傳暦上・下
    塙保己一 編 / 續羣書類従完成會

<その他、現在入手可能な書籍>
 ・書き下し『聖徳太子伝暦』
    吉田英哲・奥田清明監修 奥田清明書き下し / 世界聖典刊行協会
 ・聖徳太子伝暦
    大日本仏教全書 第百十二巻 「聖徳太子伝叢書」 所引

 


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