そう私は今まで犬をかわいいと思ったことがない。
友人の家でシーズーに「ワン」と言われただけで
コーヒーをこぼしてしまう程犬が怖いのだ。
生活のいたるところに犬はいなかった。
服でもカレンダーでも小物でも猫であっても犬ではなかった。
そんな私が、いまは犬のことを考えているなんて・・・
しかもあの値段!!買えっこない!!!

その夜食事をしているとき犬の話をしてみた。
「ねえねえ子犬ってかわいいよね。」
子供たちや夫の反応は悪くない。
そりゃそうだ。ただの話だもん。
「犬だったらアリスって名前が良いなあ。」
へ〜ぐらいの返事だった。
反対されないのが心地よい。
そりゃそうだ。ムキになるほうがおかしい。
だって、お母さんの夢は小鳥を飼うことなのだ。

翌日の朝、もう1度あの子犬に会いたくなった。
いなければあきらめもつくだろう・・・
それにあの子はメスだった。メスは面倒らしい・・・
そんなことを考えながら開店を待った。


その子は私を待っていた。
来た来た!!といって笑った。
たしかに舌を出して笑ったのだ.

いつのまにか私の財布には1万円の束が入っていた。
何時おろしたんだろう(今朝だ)
「この子、出してください。」
誰かの声がした。店員さんがあの子を出してきた。
あ・・・私にだ。じゃあ、私が言ったんだ.
ふ・・とわれにかえり「抱っこしてみます。」といってみた。
書物によると言わなくてはいけないらしい・・・
でも、今まで1度も犬に触ったことがないのだ。
抱いたところでコロコロしていて健康的か、
ズッシリしているかなんてわかるはずがない。
ただ、あったかい、と思った.


「(この子で)いいですか?」
店員さんが聞いてきた.
良いも悪いもない。
この子でなければ一生犬は飼わないだろう。




かくして、アリスは家にやってきたのだった.