平成29年9月8日〜12月12日は「神話・伝説と植物」展を開催しています。
 
次に紹介するのは展示作品の一例です。

ダリア

 キク科ダリア属の多年草。メキシコからグアテマラにおよそ15種が分布する球根植物で、古くから観賞用に栽培される。高さ30-200cm。
 地下に紡錘形の球根をもつ。葉は対生、または三輪生となり、羽状に1〜3回深く裂ける。羽片は卵形で縁には粗い鋸歯がある。夏から秋に、大形の頭花をつける。花はキクと同様に舌状花と管状花からなり、色は赤、紫、白、黄色など品種によってさまざまである。
「ダリア」 (dahlia) の名は、スウェーデンの植物学者でリンネの弟子であったアンデシュ・ダール (Anders Dahl) にちなむ。

[フランスの話]
ナポレオンの皇后であるジョゼフィーヌは、西インド諸島のマルチニク島で生まれた。この島はメキシコのすぐ近くでダリアの発祥地であったが、ジョゼフィーヌはフランスへ行くまではこの花のことを知らなかった。ダリアはマルメゾソ宮殿でひときわ輝いて咲きほこった。そこでは、ジョゼフィーヌが手ずから植え、自分の好みの花だと宣言していた。ジョゼフィーヌは、皇子や大臣たちを、花を見ることができるようにとマルメゾソ宮殿に招待したが、花、種、あるいは根を他人が持ち出すことぱ許さなかった。もし訪れた人みんなが、この花を自由に持ち帰れたなら、ポーランドの皇子も、花の一つを摘むために手をまわしたりはたぶんしなかったろう。しかし、皇子は園丁に一本一ルイ(20フラン)をにぎらせて百本を盗ませた。この事件の後、ジョゼフィーヌは気分を害し、ダリアを栽培することを嫌がってやめてしまった。
スミレ(菫)

 スミレ科スミレ属の多年草。スミレ属は温帯に広く400種以上が分布する大きなグループ。日本は野山でそのうちの56種が見られるスミレ王国だが、世界には4mにもなる木に花をつけるものもある。
 しかし、花はどれも特徴のある形をしていて、花を見ればスミレの仲間だということはすぐわかる。和名は、花の首すじにある距を大工道具の墨入れに見立てたといわれるが、距の中に入っているのは墨ではなく蜜。ハナバチなどがこの蜜を吸いにきて花粉を隣の花に運んでいく。

作品はタチツボスミレ。

[日本の伝説]
 ススキの穂が出はじめた野辺を行く旅人があった。赤い夕日が山の端に沈んで雀色に暮れかかり、旅人は野宿しようと1本の木の下に腰を下ろした。ふとかたわらの茂みを見ると、小さな青い卵があった。なぜか心ひかれたので、そっと拾って懐へ入れて寝た。
 その夜、夢で「その卵はあなたの前世の子ども。縁あって抱かれに來たのです。この土地に埋めておやりなさい」という声を聞いた。目覚めた旅人は、指示どおり土を掘って卵を埋め、旅を続けた。
 眷、用事を終えた帰途、旅人は再びこの野に来かかった。見覚えのある木をめざして行ってみると、あたり一面スミレの花ざかりだ。紫色の花が春風にそよぎ、互いにうなずきあい、前世の子どもたちの楽しげな笑い声やさんざめきが聞こえてくるようだった。
ミカイドウ

 バラ科リンゴ属の落葉小高木。高さ5mほどになる。中国原産。寒さに強く、我が国には室町時代に渡来したとされる。早春に新葉と同時にピンク色から白色の5弁の花が、短い枝の先に、一重で上向きに咲く。
 花の後には、黄緑色の実が出来て、次第に紅色となり、秋には約1cmの小さな果実となって、真っ赤に熟す。ヒメリンゴのような実で食べられる。長崎から広まったので、別名ナガサキリンゴとも言いう。本種はホンカイドウM.spectabilisとシベリアリンゴM. baccataの雑種である。中国では、リンゴを接ぎ木で増やす際の台木としても使われる。
本種のほかにハナカイドウもカイドウ(海棠)とよばれるが、江戸時代から海棠とよばれているものは、このミカイドウである。

〔中国:増補燕京郷古記〕
 十世紀にこの地(北京)を首都とした遼国の聖宗の十番目の王女は、幼名を「菩薩」といいました。才色兼備の王女は、結婚もせずに十四、五歳で亡くなり、西山に葬られました。その生まれ変わりのように、墓のまわりに生い茂ったのが海棠で、それ以来、このあたりで海棠の栽培がさかんになった、というのです。
アイリス

 アヤメ科アヤメ属の多年草。北半球に分布している。大きく球根アイリスと根茎アイリスに分類できる。球根アイリスの代表種がダッチ・アイリスである。1900年代初期にオランダでスパニッシュ・アイリスをもとにして作られた。根茎アイリスの代表種がジャーマン・アイリスである。イリス・パリダとイリス・ウァリガタの交雑種にさらに複雑に交雑され、現在は300種以上の品種があり、「最も改良の進んだ花」と言われている。

作品はミニアイリス

[ギリシャ神話]
 つつましく賢いアイリスは神々の女王ヘラの侍女。主神ゼウスが手をつけようとしたが、彼女は応じなかった。ヘラはその人柄をめでて7色に輝くネックレスを贈り、使者の役を命じた。ヘラが盃をあげて彼女を祝福したとき、数滴の神酒の雫が地にこぼれ、色あざやかなアイリスの花となった。
 以来、女神アイリスが神々の使者として大空を渡るときは、胸から輝きでた7色の光が虹となってその道筋を照らすことになった。
 あるとき、ゼウスが自分の隠し子を彼女の子だと言い触らし、ヘラが責めるとアイリスはそっと泣き、涙をふいてほほえんだ。その様子は雨上がりに雲間からもれる光のようにいじらしく美しかったので、へラもそれ以上叱れなかった。

アイリスはギリシア語で虹という意味。

ラベンダー

 シソ科ラバンドゥラ属の常緑小低木。地中海沿岸からアフリカ北部原産。6月から7月にかけ、紫色の花を穂状に6〜10個つける。花は香料に葉はシチューに使える。乾燥花はティーとして飲むと、憂鬱、不安、頭痛を和らげる。
 ラベンダーの仲間は、地中海沿岸からアフリカ北部を中心に約37種の原種が知られている。栽培品種の数は100を超えるといわれ、花色、形、高さなどバラエティに富んでいる。

[ヨーロッパの伝説]
 昔々の話である。海よりも深く青い瞳と太陽のように輝く黄金色の髪を持つ1人の美少年がいた。少女ラベンダー(Lavender)は、一目でこの美少年に恋をしてしまった。ラベンダー(Lavender)は燃える心うちを告白したかったが、何時も沢山の女性に囲まれている美少年を遠くから見つめることしかできなかった。
 はにかみやで内気なラベンダー(Lavender)は、告白できずにひたすら美少年を待ちつづけた。どれだけ、待ちつづけたのだろうか………。沈黙を守りながらも美少年に振り向いてもらいたい一心で香りの高い1輪の花となった。