<前頁 -2-次頁>ed by hiroatsu, 1997.12.26 renew
2. 美術情報収集法学術的な「ネットワークのネットワーク」であるインターネットも1989年にCERN(用語10)がWWW(用語11)を開発して学術情報界では、その利便性が認識されつつあった。
日本で本格的に普及しだしたのは、1992年にPC-VAN(用語12)やNiftyServe(用語13)などのパソコン通信(用語14)との接続を許可し、1994年10月にインターネットの発展を願ってImpress社がInternet Magazine(注2)を発売し、社会的に普及して以来である。その後、標準的ブラウザ(用語15)がMosaic(用語16)からNetscape Navigator(用語17)へ移行し、動画を扱うプログラミング言語JAVA(用語18)の開発、マイクロソフトの参入、プッシュ技術の開発(用語19)等々、現在では完全に情報革命が行われたと言っても過言ではない。
研究機関、企業、個人で作成している情報は700万ページを超えると推定され(注3)、これらの情報の海から、求める美術情報を検索するのに、大きく分けて以下の4つの方法がある。
2.1 冊子体、耳学問の活用
冊子体の一覧性と持ち運びの利便性と機械検索の良さを兼ね備えたものは、やはり、CD-ROM付き書籍である。
これらの冊子体から美術情報を得るには、前述のInternet Magazineなどの雑誌記事、あるいは、「日本のホームページ100,000ブックマークス」(注4)や、Internet & Web Yellow Pages(注5)などの図書がある。
本稿の目的は、「インターネット美術情報:収集、加工、発信」であるので、参考のために現在の美術情報入手のための関連雑誌(URL(用語22)情報を掲載している雑誌等)や、最近発売されたホームページを収集する美術関連図書を別表1に掲載する。
また、CD-ROMで美術作品とその解説は、例えば新潮社の『世界美術辞典』、富士通の『ゴッホ全作品集』など別表2のように種々あるが、マイクロソフトの『ENCARTA』のように、最新情報をインターネットで入手する方式が、今後のCD-ROM付き図書の主流となるであろう。
2.2 検索エンジンの活用
2.2.1 検索エンジンとは
インターネット上のURLを検索するシステムで3つの方式に分けられる。
ひとつは登録用フォーム(用語23)を用意しておき、ホームページ作成者が投稿できるようにする方式で、検索エンジン側で収集したURLをカテゴリー別に分類したもので、代表的なものにYahoo! や NTT DIRECTORY がある。もうひとつは検索ロボットが網羅的にURLと文章を収集し、文章中のキーワードから検索できるようにしたもので、代表的なものに Artavista や GOO がある。
さらに、両者を兼ねたものに Infoseek がある。
どのような検索エンジンがあるのかは、Yahoo! Japanの「ホームページの検索」に詳しいのでご覧願いたい。
表3に主な検索エンジンを紹介する。表3 主な検索エンジン
2.2.2 メタサーチ利用法
検索語を一度入れて、検索エンジンを次々に呼び出す方式は便利なもので、メタサーチと呼ばれるが、川崎克己氏が作成したJavaScript(用語24)を筆者の有益リンク集に掲載している。
この方法は主要な検索エンジンでも取り入れて現在では一般的となっている。
例えば、NTTの「世界の検索エンジン」では主な検索エンジンを紹介し、フォームの中にキーワードを記入すれば、その検索エンジンで検索してくれる。
おすすめなメタサーチにはASAI ISAOさんの「検索デスク」がある。
2.2.3 検索のこつ
Yahoo! JAPANなどのカテゴリー検索では、例えば、美術教育などのキーワードを検索すると、「Yahoo! JAPANのカテゴリーとは一致しません」とあるが、ヒットしたURLが表示される。
以下にYahoo! JAPANやInfoseekの美術カテゴリーを掲載する。
表4 Yahoo! JAPAN の美術カテゴリー
Yahoo! JAPANの美術カテゴリーは本家米国のYahoo!に準拠しており、世界でもっとも利用されるカテゴリーである。
このシソーラス(注6)が妥当か否かは別の稿に譲るが、Yahoo! JAPANの場合、「芸術と人文」カテゴリーから必要な美術関連情報を絞り込み検索する方法が賢明である。一方、GOOは検索ロボットが日本のすべてのHTMLファイルを網羅的に収集し、カテゴリーに区分されていないので、例えば、「美術館」で検索した場合4万件も表示され、それを順次表示する訳には行かない。
そこで、いかに絞り込むかの技法が必要となる。
筆者は、4字熟語と2字熟語のAND検索を基本として、絞り込んでいる。(例:美術教育 AND 大学で、結果的に、美術と教育と大学の絞り込みが可能)
また、特定の画家を検索する場合、Yahoo! JAPANより有効であることは言うまでもない。
2.3 蔵書検索システム
検索システムではURL検索だけでなく、学術情報センターのNACSIS-Webcat (用語25)や国会図書館の「パイロット電子図書館プロジェクト」(用語26)、九州大学附属図書館の多機関検索(用語27)や、各図書館のWWW-OPAC(用語28)などがあり、川崎氏のJavaScriptを活用して筆者の「目録検索」ではとりまとめている。全国の大学の中では、NACSIS全国共同目録の開始以前に所蔵データをコンピュータ化している大学も多く、それらのデータはNACSIS-Webcatに反映されていないので両方見る必要がある。
一方、各書店の蔵書検索システムは発注させることを目的としているが、出版直後のデータが入っており最新情報を得るのには有効であり、こちらも筆者の「目録検索」に収集する予定である。
また、日本書籍出版協会が前年六月末までに出版された「入手可能な書籍」を『日本書籍総目録』として刊行していたが、そのデータを9月からWebで公開した。
このBooks.or.jpは、53万データが入っており、ヒットデータと加盟出版社とのリンクが貼られており、注文可能となっている。また、神田古書街の「日本の古本屋」では、美術書がよく取引され、
これらのWeb上の蔵書検索で、分類で検索できる図書館や、書店は現在のところ見あたらない。
従って、例えばNDCの720(絵画)で検索し、ブラウズすることはできず、このことがWeb検索全般の課題でもある。
2.4 オンラインジャーナルと目次情報
オンラインジャーナルとは、一般的にインターネットを通じて画像を含めた研究論文の全文を利用できる雑誌を言い、CD-ROMやフロッピー形態で送付されるものも含む。
オンラインジャーナルの普及は目覚ましいものがあり、論文の目次情報までが無料であるのが一般的である。どのようなオンラインジャーナルがあるかは、ELSEVIERやAcademic-Pressあるいは、紀伊國屋書店等の書店のリスト以外に韓国のKorean Basic Science Institute(略称:KBSI)や北海道大学附属図書館がとりまとめている。
このうち、KBSIでは、「芸術と人文」「社会科学」「自然科学」の3分野に分け、さらに約9,600タイトルも紹介され有用である。
「芸術と人文」は約1,300タイトルあり、大部分の目次情報は無料で公開し、雑誌によっては、当分の間無料のものもある。なお、オンラインジャーナルの動向については、「平成9年度大学図書館職員講習会(文部省主催)」の講義要録を参照されたい。
日本のオンラインジャーナルについては、未だ緒についたばかりで、学術情報センターの電子図書館が契約した学会誌を提供している(注7)程度であるが、美術関連学会のジャーナルは以下の通りである。
2.5 メーリングリストとパソコン通信
メーリングリストとは、電子メールの仲間に同報できるシステムで、管理者のホームページに「仲間募集」の仕組みを行い、サーバに投稿メールをためて同報する。
これも、Yahoo! JAPANの「日本のメーリングリスト一覧」や、月刊MLでグラフィックス(現在5件)や芸術(現在2件)などで検索すると、美術関連メーリングリストが検索できる。美術関連では、CG、デザイン、漫画、写真などのいわゆる応用美術の方が若干多いが、全体的に少ないので以下に代表的なメーリングリストを紹介する。
AH-ML(美術史メーリングリスト) AH-MLの主なメンバーは美学美術史関係の研究者である。美術関連雑誌の「目次情報」をメンバーが提供しあい、さらに、研究動向を通信している。
3D-ドライバーメーリングリスト 「やす」さんの3D(サンデー)ドライバー(3Dアート)とPhotoMagicに関するメーリングリスト
やきものメーリングリスト 主に「やきもの紀行」「やきもの展覧会情報」「やきものテレビガイド」「やきもの技術教室」「やきもの図書情報」などの発言が活発に行われている。
学術人文系日本語メーリングリスト Virginia Woolf Webの福島氏が作成する文芸、哲学、美学関連の学術系メーリングリストである。
かりん(図書館関係メーリングリスト) 美術情報ではないが、情報収集整理技術などは、やはり餅は餅屋で、これら図書館系で得られる技術情報も有用である。
美術史関連では、やはりAH-MLが専門家集団故に役立つ情報が多い。
メーリングリストは仲間うちのメモのようなもので、この公開には「引用」の原則は成り立たず、許可が必要である。
また、以下に紹介する加藤哲弘氏(美学)の美術情報は有益で、本稿の性格上「引用」の範囲を超える部分まで掲載したいと思った。
そこで、加藤氏の許可を得て、6月28日の「インターネットの中の美術館」に関する報告内容のうちコメント文を除いて以下に紹介する。
本情報は、KUNSTCHRONIKの紹介記事であるが、加藤氏も述べているが情報内容の正確性の保証は情報を受けたメール仲間が確認する必要がある。
お約束していました KUNSTCHRONIK 掲載のドイツのインターネット情報ですが、これからいくつかに分割してお伝えします。
いつものように、内容については、保証のかぎりではありません。
とくに、今回は、もとのテクストに掲載されている数字や記述にも、少々疑問を感じる点がいくつかあります。
あらかじめご了承いただくと同時に、もし引用などされる場合は、かならず一次資料にあたって再確認をしてください。
-------中略--------
KUNSTCHRONIK HEFT 1 JANUAR 1997
NEUE MEDIEN(ニュー・メディア)
Museen im Internet (1)
(Hans Dieter Huber)...33
-------中略-------
内容の概略とそれに対するコメント:
この一連の記事は、「電子時代の美術史学」というシリーズタイトルをつけられている。
さすがにドイツの美術史学らしく、全体としては、たんにホームページを開設している美術館の紹介というだけではなく、"History of Museum Home Page" というかたちで事態を歴史化しようとする姿勢が目立っている。
話は、まず、1983年のNCSAモザイクの登場のところから始まる。
そして、現在までのWWWの発展経過をおさらいしたあと、「最初にホームページを開設した美術館はどこか」という問いが示される。
答は、意外なことだが、どうやら、1994年にホームページの試験運用を始めたヴィーンのルートヴィヒ財団近代美術館であるらしい。
翌年の1995年になると、続々と美術館博物館のサイトが登場する。
まず、ボストンのコンピュータ博物館、ニューヨークのダイアセンターが運用を開始。ついで、7月14日にルーヴル、8月にメトロポリタン、サンディエゴ、夏の終りにサンフランシスコ、11月にシカゴ美術研究所がページを設けた。
1996年には、合衆国以外でも、開設が相次ぐ。1月30日にウフィツィ、2月16日にプラド、9月にはブリティッシュ・ミュージアムとアムステルダムの市立美術館がネットに登場した。
・・・・・中略・・・・・
1996年の11月、ルーヴルのサイトは、一日あたり、80,645 の訪問者を記録したという。
同じときに、メトロポリタンは、63,000。シカゴが、10,000 で、ウフィツィやプラドでは、およそ 1,100 だった。
もちろん、この数字は、コンタクトの数であって、実際の人数ではない。そこで、ルーヴルは、独自の調査をした。
それによれば、ルーヴルのウェッブサーバの訪問者の実数は、一日で、2,500 から 4,000 となる。
・・・・・中略・・・・・
このような「仮想来館者」との交流という観点から、筆者は、この記事のなかで、ボストンのコンピュータ博物館のインタラクティヴページ "Who's Out there?" に関心を示している。
しかし、わたしとしては、むしろ、いわゆる「アウトリーチ」の一端をWWWに担わせようとするアメリカの公立美術館、たとえば、ロサンゼルス・カウンティ美術館のページが提供するような「ユーザー・フレンドリネス」のほうに好感を覚える。
いずれにせよ、このような考察を、最近増えた日本の美術館のホームページに対して行ってみるとどうなるのだろうか。
わたしは、BUSY(LAZY?) なので、とてもできそうもないけれど、やればけっこうおもしろいデータが出てきそうだ。
なお、うえで言及したサイトのURLは、以下のとおり。
ウィーン、ルートヴィヒ財団近代美術館
>Wiener Museum fuer Moderne Kunst Stiftung Ludwig<
http://www.austria.eu.net/mmkslw/TEST/
ボストン、コンピュータ博物館
>Computer Museum in Boston<
http://www.tcm.org/
ニューヨーク、ダイアセンター・フオー・アーツ
>New Yorker Dia Center for the Arts<
http://www.diacenter.org/
サンディエゴ美術館
>San Diego Art Museum <
http://www.sddt.com/sdma.html/
サンフランシスコ美術館
>Fine Arts Museum, San Francisco<
http://www.famsf.org/
シカゴ美術研究所
>Art Institute of Chicago<
http://www.artic.edu:80/aic/firstpage.html
ウフィツィ美術館
>Uffizien, Florenz<
http://musa.uffizi.firenze.it/
プラド美術館
>Prado, Madrid<
http://www.mcu.es/prado/index_eng.html
アムステルダム市立美術館
>Stedelijk Museum, Amsterdam<
http://art.cwi.nl/stedelijk/
ロサンゼルス・カウンティ美術館
>Los Angeles County Museum of Art - LACMAweb Home Page <
http://www.lacma.org/
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加藤哲弘@関西学院大学文学部美学科
一方、パソコン通信はインターネットと異なり、やや閉ざされた世界で、かつ、インターネットのようなハイパーリンクや動画も手軽にはできないが、「掲示板」、「パティオ」などで、情報交換を行っている。
アートドキュメンテーション研究会のメンバーでは、「パティオ」を開設し、美術情報の「目次情報」や美術に関する疑問と回答などの情報交換を行っている。以下にその内容の一部を「引用」する。
一般にこれらの情報が紙媒体で出版されるまで1週間から半年、その間に更新された有益情報はサイバースペース(用語29)を流れている。
東京造形大学の大江です。同誌掲載の「いんふぉめーしょん」のデータです。◎博物館におけるマルチメディアの活用に関する調査研究報告書(II) 平成8年度/日本博物館協会1997.3 90p.
○特集: 人文・芸術系のデータベース 今そしてこれから/情報処理. Vol.38. No.5(1997.5) 八村広三郎: 人文科学とデータベース p.377-382 照井武彦: 歴史データベース 日本史を中心に p.383-387 及川昭文: 考古学データベース 過去を復元するマルチメディア技術 p.388-391 杉田繁治: 民族学データベース デジタルミュージアムを目指して p.392-396 長瀬真理: 文学データベース 急がれる総合的な整備環境 p.397-400 上田修一: 絵画データベース 索引法と検索法を中心に p.401-404 加藤 辿: 美術品画像データベース p.405-410 鈴木 孝: 音楽データベース 音楽情報の記号化とデータベース p.411-414
○森岡祐二: 「池田家文庫マイクロ版史料目録」のデータベース化/大学図書館研究. 第51号(1997.7), p.9-26○福冨正彦: マルチメディア電子図書館の構築と運用について 奈良先端科学技術大学院電子図書館/大学図書館研究. 第51号(1997.7), p.27-39○西脇紀子・島影昭児: マルチメディアライブラリ・システムへの取り組み 長岡技術科学大学付属図書館/大学図書館研究. 第51号(1997.7), p.40-53
○西岡紀子: 専門図書館を見る 財団法人 松竹大谷図書館/専門図書館. No.164(1997.7), p.28-29
◎インターメディウム・テキストブック/光琳社出版. (1997.7), p.183(図版カードを同梱)
○水谷長志: 美術館コンピュータ事情 突然ついた情報化予算/美連協ニュース. No.55(1997.7), p.15
○「公文書館法」制定から10年 情報公開へ土台作りを/朝日新聞. (1997.7.17), p.13
○特集: マルチメディア時代の到来 電子博物館構想への第一歩/文化庁月報. No.347(1997.8) 坂村健: 巻頭言 デジタルミュージアム 博物館の未来をめざして p.4-5 高見沢明雄: 東京国立博物館の文化財情報システム p.6-7 波多野宏之: 美術館活動の拡張と情報 国立西洋美術館 p.8-9 神野真吾: 山梨県立美術館ホームページの現状と未来 p.10-11 西田宏子: 私立美術館とマルチメディア 美術品を情報として公開する取組み p.12 中野茂光: 文化資産のデータベース化と情報発信 「石川新情報書府」構想の推進 p.
このような有益情報が無料で電子メール上で駆けめぐり、そのURLを我々はその場で見て、論考し、他へ提供できるということは、従来の出版文化では実現できない世界である。
2.6 ホームページ美術情報
さて、検索エンジン、例えばgooで「美術史」を検索し、関連する個人のホームページをブラウズして、本人の研究内容や関連リンク集からの情報収集が、インターネットの最も特徴的な情報収集法である。
前述の検索エンジンやメーリングリスト、雑誌等で得られた幸運な出会いは読者を「インターネット文化」の虜にするであろう。例えば美術関係では、初期の頃から研究成果を発信している塚原晃氏、加藤哲弘氏、宇佐見文理氏、あるいは、展覧会情報などを収集しているギャラリーアート遊の沢井氏、日本の美術館などを収集している東京国立博物館、文化財共通索引方式で美術品情報を提供している各美術館等々。
現在これら約150の公共財的なサービスを展開しているサイトを、筆者の「芸術館」ページに紹介しているのでご覧いただきたい。
芸術館では、50音順、主題順、地域順、設置母体順にソートしている。
これらの情報の加工、メンテナンスについては、次章以降に述べるが、学術情報系の美術情報を主に「アートナビ」として機能できるように更新していきたい。
さて、筆者の主な関心は日本東洋古美術で、ここでは特に同分野のURL美術情報の一部を紹介する。
2.6.1 個人の日本東洋美術情報
以下に、筆者の推薦する個人の日本東洋美術情報の一部を紹介する。
塚原晃氏(近世日本美術、修復) 司馬紅漢の研究、絵画修復の研究、美術情報
宇佐見文理氏(中国哲学、中国芸術) 中国の哲学、画論(原文、釈文、校訂)、中国学関連リンク集
加藤哲弘氏(美学) ドイツ美学、新刊紹介、学会報告、資料解説、美学・美術史リンク集の中の日本東洋美術関連。などなど。
2.6.2 中国の美術情報
一方、東洋美術の本家の事情を二三紹介する。
『本とコンピュータ』No.2の中の二階堂善弘氏「インターネットが変える「漢文」の世界」(注8)によると、台湾中央研究院は『二十五史』、『藝文類聚』、『朱子語録』などの古籍のデータベース化を推進してきたが、その一部がインターネットで利用でき、また、台湾大学仏学中心では、膨大な数の漢訳仏典を納めている。二階堂氏はこれらの情報をニフティサーブの「歴史フォーラム本館」18番会議室(FREKI MES18)に紹介している。
ちなみに、「インターネット美術情報」ではないが、同誌にある林浩氏の「世界電子本事情. 中国」(注9)によると中国では国家戦略として以下のような古籍の電子化を推進している、との報告がある。
例えば、今世紀末まで『永楽大典』、『四庫全書』、『十三経』、『二十四史』、『全唐詩』、『大蔵経』、『敦煌文献』などの全文をCD-ROM化する計画がある。
既に、美術関係を含む情報では『中国大百科全書』(CD24枚)、『中国美術全集』(古代編CD60枚)、『中国民間芸術』(CD10枚)、『中華民族』(少数民族の歴史文化、CD56枚)、『中国陶器』(CD20枚)、『西蔵民間藝術』(CD2枚)、『中国学位論文数拠庫』(全論文13万5千件、CD3枚)が出版されている、とのことである。
これに比べ、中国、韓国よりも早くコンピュータ化した日本では、「電子図書館が著作権(出版権)を侵害する」との意識が文化遺産である古典籍電子出版化のネックとなっており、結果的に同法第1条の目的にある「文化の発展」を阻害する要因ともなっている。「国民の知的財産として学協会が基礎的な資料を選定し、選定した資料については国家政策として電子出版化し、世界各国語に翻訳しインターネットで無料で全世界へ提供し、世界の文化発展に協力しよう」などと言う教科書無償配布制度のインターネット版が、どうして政府、学会、図書館界、出版界、産業界の協力で実施できないのか、とのもどかしさを感じているのは筆者だけではない。
第9回DL研究会で発表したバージニア大学の野口幸生氏の報告にも興味深い事例が報告されている。
2.6.3 日本の研究機関の日本東洋美術情報
「ネットワークの著作権」や、「学術文献の世界遺産として無料でインターネットへ提供する」問題については別稿に譲るが、その中でも細々と電子化しているいくつかの美術館、大学等の美術関連部門の数例を紹介する。
文化財共通索引方式 美術品に関しては文化庁の文化財共通索引方式によるデータベース化が着々と進行しつつある。
その要点は以下のとおりである。
- 収蔵品の情報は,それぞれの博物館・美術館が,WWWによってサービスする。
- 個々の収蔵品の情報ごとにURLを与える。
- 収蔵品の情報自体とは別に共通の索引を分担して作成する。
- 検索時の共通索引と個々の収蔵品情報との対応はURLにより自動的に処理される。
- 共通索引は簡略な構造とする。 この方式は、学術情報センターが全国の大学図書館所蔵目録を共同で作成していることと考え方が似ている。
蓄積が多くなれば、日本文化紹介で世界へも貢献するが、問題点が無いわけでもない。
例えば、参加美術館・博物館の審査をどうするか、館蔵作品の選定はどうするか、寺社や画廊や個人が所有する重要文化財級の情報はどうするか、大きなサイズの画像ファイルをどこまで認めるか、などである。
少なくとも、国宝、重要文化財、重要美術品については、「国の政策」として網羅的に収集、提供すべきと筆者は考える。全国大学図書館等の電子図書館計画 大学図書館等の所蔵する美術関係では主に各大学の貴重書である古写本や奈良絵本であるが、一般に知られていない屏風や軸物などもある。これらの電子出版化については、一部の大学で着々と実行しつつある。
「ネットワークと電子化情報の活用」に電子化している主な大学のリストを紹介する。
東京大学史料編纂所のデータベース検索 日本東洋古美術の史料としては、東京大学史料編纂所以外にも宮内庁書陵部、国文学研究資料館や国立公文書館、京都大学人文科学研究所などの歴史史料に含まれる傍証史料が利用される。
以上、インターネット美術情報の収集について若干の紹介をしてきたが、インターネットラジオやインターネットテレビに代表されるプッシュ技術の進化と自作検索エンジンの組み合わせにより、日々増加するインターネット美術情報のうち、質を確保しながら学術系美術情報を放送することが、「アートナビ」の今後の課題である。
国文学研究資料館や筑波大学日本美術シソーラスデータベースのWeb版は現在準備中であるが、東大史料編纂所のデータは日本美術史研究には必須の情報であるが既にインターネット上で検索できる。
<前頁 -2-次頁>