01-楽器収蔵庫


ハーディーガーディ=ビエル=Vielle / フランス   
Hurdy-Gurdy (or) Vielle / France File:001


2002年10月12日(土) 
13世紀、ヨーロッパの吟遊詩人や旅芸人が物語りや歌の伴奏に使った楽器。形状はリュート属の楽器と言っていい。共鳴胴の上に並ぶ6本の弦のうち、中央の2本はメロディー弦、その両側に2本ずつのドローン弦が並ぶ。楽器の胴の中に円形砥石の形をした回転円盤が内臓されていて、外に突き出しているハンドルを回すと回転円盤と接している6本の弦が鳴る仕掛けになっている。胴の表には鍵盤が取り付けてある。鍵盤を押すと機械的に中央の2本のメロディ弦を押さえてメロディを奏することになる。左手指でギターのフレットを押さえる代わりを鍵盤にさせていることになる。持ち方は、右手でハンドルを回し左手指で楽器の上にある鍵盤を押して演奏する。ドローン弦があるためか、目をつぶって聴くとバグパイプと間違えそうに似た音色だ。鍵盤を使って弾くのだから単調な音楽になるかとおもうと、決してそうではなく、ハンドルの回転を激しくしたりゆったりすることによって、メリハリのある演奏になる。機械楽器の範疇に入っているものの、感情表現豊かな楽器だといえる。写真はフランス、ガナ町にて。
ハイドンは、この楽器を使った協奏曲5曲とノクターン7曲を残している
楽器分類:機械楽器 / 第一グループ。
(検索語:ハーディー・ガーディ、ハディ・ガーディ、ハディガーディ、ハーディ・ガーディ、ヴィエル、Drehleier、ドレーライエル)


カンテレ / フィンランド   楽器の音 = Sound
Kantele / Finland File:002


2002年10月19日 (土曜日) 002
カンテレのもとの形は細長い三角形で、長さ30センチほどの5弦の楽器。今日の楽器は形も大きく、弦の数も30本や36本のカンテレに改良されている。細い繊細な音で、耳を澄まして聴く楽器の一つだ。両手のすべての指を使って演奏する。不思議なのは、楽器のとがった方から弾く場合と反対側の平らな方から弾く場合があることだ。熟練した奏者はとがった方から弾くのだそうだが、初心者が上達して楽器の演奏の向きを変える時、混乱するのではないだろうか。いずれにせよ、19世紀まで存在したフィン語圏の吟遊詩人が伝えてきた英雄叙事詩カレワラのなかに5弦のカンテレの話がでてくる。その一節に、英雄ワイナミョイネンが白樺の木を楽器の胴に、鳥の口から落ちた金銀の釘を止め金に、乙女の髪を弦にしてカンテレを作り、二日二晩弾き続けて人々を魅了したとある。カンテレはフィンランド民族を代表している楽器と言って間違いない。この上なく優しい音色を持っている。この国の小さな町のカンテレ演奏会で、女性の奏者に混じって太い腕の大男のすばらしい独奏を聴いたことがある。細くて幅の狭い弦を太い指がなめらかに動くさま。演奏が終った後、拍手がしばらく止まらない。聞けば、長距離トラックの運転手が職業とのこと。優しさと強さと。フィンランドの典型的な一面を見た時だった。写真はカウスティネン民族音楽舞踊祭にて。
楽器分類:弦鳴楽器 / チター族
(検索語:カンクレス、カンネル、コクレ)


デゥブラッグ〔右) ジェゴグ音楽/ インドネシア バリ島
Dublag in Jegog / Bali Indonesia File:003


2002年10月26日
バリ島の音楽といえばガムラン。金属楽器の音楽だが、バリ島の西の端ヌガラ町(Negara)にはガムランを竹製の楽器で構成したような音楽、ジェゴグがある。竹がたくさん自生する地域だからだろう。起源は確かなことは分からないが、第2次大戦やインドネシア独立戦争で演奏の伝承が途絶えていたものが、1980年代前半に復活したという。演奏形態はガムランに似ていて、楽器は20ほど、演奏者は20数人。楽器編成は最前列にGangsa、2列目にKancil、3列目にKuntungとSwir。、後の列の両側にUndur、後の中央にDublag(以上すべて竹の木琴)が並び、加えてガムランと同じようにクンダン(太鼓)やスーリン(笛)、Kenong(カネ)、Gecek(チェンチェン)が脇で演奏する。ヌガラのある村にジェゴグを聴きにいてみた。普段は田や畑、果樹園、森で働いている農民が演奏者だ。神に捧げる音楽なのでみな正装している。なかなか優れた演奏をそこで聴かせてもらった。不思議なのは、多人数の合奏なのにピタッと音が合うことだった。楽譜を使わず、指揮者もいないのに。質問に対して、「厳しい練習と地域の同胞としての意識、それに互いに決めたことを確実に守るルールがあるから」と村の長の説明だった。圧巻は最後列のデゥブラッグと呼ばれる大竹琴(仮名)だ。太さ20センチ、長さ5メートルの竹を並べた楽器の上に2人の奏者が上がり、重い大きなバチで叩くと驚くような重低音がでる。人の耳の可聴範囲を超えた響きを、体の奥底で聴く心地よさにびっくりだった。村人の大事にしている音の一つに違いない。 
楽器分類:デゥブラッグ / 体鳴楽器 / 打つ/ 竹製の木琴
(検索語:竹楽器、ドブラッグ) 


ルーション = 蘆笙 / 中国 苗(ミャオ)民族の地域
Lu-sheng / China File:004


2002年11月02日
蘆笙(ルーション)は、現在では中国の西南地区に住んでいる苗(ミャオ)、瑶(ヤオ)、トンの少数民族の踊り手が主に使用している民族楽器。蘆笙を吹いて踊っているのは苗の人たち。この楽器は漢の時代から存在していたようだ。紀元0年前後で、現代のものとそれほど変わりのない形だったらしい。蘆笙を吹いている樂舞の俑(よう)が出土していることから推察されている。大きさ、管の数は一定ではなく、1管から10管までのものがあったそうで、一般的なのは6管の楽器。長さの異なる竹を、吹口のついた木製の筒に差込み、それぞれの管の底部に銅製のリードをつけ、木製の筒に息を吹きこんで演奏している。管の中ほどの指穴を押さえることで音階を変えるようになっている。蘆笙を吹きながら踊るという演奏形式で聴いた。かなりの練習を積んでいるのだろう。激しい動きのなかでの息の乱れのない演奏だった。踊りながら演奏するのは、太鼓ではよくあるけれど、激しい踊りをしながら息を吹きこむ演奏をするのは、他に思いあたらない。樂舞の俑が物語っているように、一人で樂と舞をこなす伝統から来たものだろうか。 
楽器分類:ルーション / 氣鳴楽器 / 自由氣鳴楽器=自由簧(こう)楽器
(検索語:ロショウ)


ダンダン /  ベナン (アフリカ)
Dandang / Benin File:005


2002年11月09日
ここで使われている太鼓は円筒型。両面に皮を張ってあり、取りつけた紐を左肩に掛け、先端がL字型になったバチで立った状態で叩く。これはブーデゥー教の儀式のなかで用いられている太鼓。アフリカの西海岸の小さな国・ベナン(Benin)の人たちが、野外で繰り広げたブードゥのパフォーマンスの一場面だ。ベナン国周辺はブードゥ教発祥の地として知られているが、ここに住んでいるフォン族は住民の70%がブードゥを信じているといわれている。パーフォーマンスを演じる人たちは、観客に所作を演じているうちにブードゥへの祈りの世界に本当に入り込んでしまう。写真の左手に見える白装束の女性は、太鼓・ダンダンの激しいリズムと響きに踊り狂って、最後には恍惚状態になり、体を硬直させたまま男たちに介抱されながら運ばれていった。太鼓というものはその意図によっては呪術的な力を持つものらしい。
楽器分類:ダンダン / 膜鳴楽器 / ドラム / 円筒型
(検索語:drum)


ナイ / ルーマニア
Nai / Romania File:006


2002年11月16日
長さが異なる管を横に並べたパンパイプの笛。ギリシャ神話の牧神・パンが、葦を束ねた笛を吹いたことから、管を並べたこの種の笛をパンパイプ、パンフルート、パンの笛と呼ぶようになった。管は閉管で、音の高さの順に7、8本、から20本が並べてある。ルーマニアには出土した紀元2世紀石像のなかににパンパイプを吹いているものがある。長い歴史をもった楽器だ。ルーマニアの野外音楽イベントでナイの生演奏を聴いたことがある。静かで優しく、時に火花の散るような華麗で激しい序破急の表現があった。どんな楽器でも演奏者によって表現豊かになるのは当然だが、ナイは特に際立っているように思う。演奏者にたずねたところ、「演奏にはいろいろな技巧がある。例えば、半音を出すには吹く角度を変えるのだけれど、とても難しい。でも、それがいいニュアンスに作る。不便なままにしておくことで微妙な味わいの音を生む」、と。パンパイプ系の笛はボリビア、ソロモン諸島、フィリピン、ウイグル自治区、ウガンダやケニアで現在使われているし、中国の排簫(はいしょう)や日本の正倉院にも18管の甘竹簫(かんちくしょう)がこわれた状態だけれども残っている。現在、復元されたものがある。世界に分布した楽器だ。
楽器分類:ナイ / 氣鳴楽器 / 吹き穴(フルート族) / パンの笛
(検索語:ムスカル、Muscal)


モリンホール=馬頭琴 / モンゴル  楽器の音 = Sound
Morin-khuur / Mongolia File:007


2002年11月23日
馬頭琴はモンゴルで広く使われている擦弦楽器。棹の先端に馬の彫刻があることから馬頭琴(ばとうきん)、モンゴルではモリンホールと呼ばれている。「モリ」はモンゴル語で馬という意味だ。台形の胴はチェロのように板で作られ、中央がふくらませてあって、大きくて繊細な音がでるように改良されている。しかし、昔からの伝統的な馬頭琴は胴に馬や牛、蛇の皮が張ってあり、2本の弦は馬の尾をよって太くしたものを使い、弓は馬の尾毛を利用していた。近頃ではそれもナイロン弦になりつつある。2弦間の音程はふつう完全4度。今日では「モンゴルのチェロ」と言われるようほど、音質や音の精度が改良されてきている。伝統楽器が西欧音楽への志向しすぎる点は気になるところだ。馬頭琴にまつわるいくつかの話のなかで、次のような話が残っている。「昔、若い兵士を好きになった娘が黒い馬を贈った。でも、その若い兵士を好きだったもう一人の娘が嫉妬して、馬を殺してしまった。兵士は悲しんで、その馬の皮を胴に、頭を棹の先に彫刻し、馬の尾で弦や弓を作った」。恋人に馬をプレゼントする。草原を馬で跋扈する遊牧民族ならではの話だ。
楽器分類:モリンホール / 弦鳴楽器 / リュート族 / 弓奏 擦弦
(検索語:)


カスタネット / スペイン
Castanet / Spain File:008


2002年11月30日
フラメンコの踊りで使われるカスタネット。この楽器の仲間には、日本では沖縄の四つ竹、男性的な踊りで使うアフリカの金属製のカルクバ、悩ましいベリーダンスで手指に付け小型シンバルのサガート、インド東海岸のマスリパタン町で見た鈴付のカルタルなどがある。どれも踊りと一緒に使われる楽器だ。エジプトの壁画や古代ギリシャの壷絵にも描かれているから歴史は古い。カスタネットの名はスペイン語のカスターニャから由来している。栗という意味だ。栗を真半分に割った形に似ていることから名づけられたのだろう。硬い木でできている。音をより響かせるために、打ち合わせる内側にへこみがある。二つの木片を組み合わせる紐の輪に親指を通して手のひらに保ち、残りの四指で連打する楽器だが、踊りの感情の激しさを強調する役目を果している楽器だと思う。フラメンコは「アンダルシアで発達したロム(ジプシー)起源の音楽と舞踊を指す」言葉だと言われている。マドリッドのタブラオで観たフラメンコ(写真)の踊りで、踊り手が激しいカスタネットを響かせた後に一瞬、ピタッと終わる間(ま)の美しさは、カスタネットならではのものだろう。天才的なカスタネット奏者としてルセロ・テナの名があげらる。
楽器分類:カスタネット / 体鳴楽器 / 打ち合わせる
(検索語:カスタニュエラ、castanuela、ナッケレ、nacchere)


プク / 韓国
Puku / Korea File:009


2002年12月07日
太鼓・プクはパンソリという「語りもの」の伴奏に用いられる。伴奏と言ってもこの太鼓が持つ役割は大きく、語り手と対等な位置を占めている。プクは鋲止めの両面太鼓で、縦に構えて原則として左手で太鼓をささえ、右手に小さな棒をもって叩く。また皮の面だけでなく胴を刻むように細かく叩いたり、手で叩いたいたり、また支えている左手で叩くこともある。名人が演奏すると非常に表現豊かな細かい感情を打ち分けるところが聴きどころの一つだろう。パンソリは写真にあるように、語り手と太鼓と二人で演奏するのが伝統的な演奏だ。歌い手の発声法は美声ではなく、しゃがれ声で迫力のある声を音楽的に生かしている。そして一人で何人もの役の声を一人で使い分けて演じるところが魅力だ。演目の代表的なものは、夢龍と遊女・春香との恋物語・「春香歌(チュンヒャンカ)」。腹から絞り出すような声。語りの節でプクの奏者が「アー」や「ウィ」などとかけ声を掛けること。物語りの場面に合わせて、プクの非常に細かい感情表現をした打ち分け。語りと伴奏がほぼ対等。こう見てくると、邦楽、特に義太夫と三味線の関係に似ているところがある。いつも思うことだけれど隣国の音楽と私たちの音楽が何故これほどまでに違っているのか、という疑問の答えはともかくとして、こうした類似点はその音楽を楽しむ入り口かも知れれない。
楽器分類:プク / 膜鳴楽器 / 樽型
(検索語:)


ラオネダス / イタリア
Launeddas / Italy File:010


2002年12月14日
イタリア、地中海のサルジニア島だけに伝わる笛・ラオネダス。フェニキアが起源といわれている。三本の葦を組み合わせたクラリネット系のシングル・リードの笛だ。それぞれリードのついた三本を一緒に口にくわえ、鼻から息を吸いながら一方では息を吹き込み、音を切らないように演奏する特別なテクニックを必要とする楽器だ。ほっぺたを膨らませてバグパイプの皮袋の替わりをさせる。西アジアにもマトブッチなど同じ演奏法のものがある。三本の笛の長い1本はドローン管。他の短い2本がメロディーを奏する管で、1本目は表に5つの指穴があり裏側に1つ。もう1本には表側に6穴。一つの楽器でありながら合奏しているように聞こえて、個性の強い音が特徴だ。島には古くからテノーレという4部合唱の形式がある。歌のリーダーが最初を歌うと、答えるようにびりびりした声で4部合唱を歌うのだが、なかの一人はドローンだ。これがラオネダスの音の形にとてもよく似ている。世界のどこでも、その地域の歌や歌い方は楽器の影響を受け、また楽器は歌の代用品として存在するという、お手本がここにあった。 写真はフランスの民族音楽祭で撮影したもの。写真右はテノーレを歌う人たちが声の響きを確かめている場面。。
楽器分類:ラオネダス / 氣鳴楽器 / 単簧=シングルリード / クラリネット系
(検索語:ラウネダッス、ラウネッダス、ラウネダス)


ビーナ  / インド
Veena / India File:011


2002年12月21日
南インドの代表的な弦楽器、ビーナ。北インドではシタールに相当する。ビーナは外部からの影響を受けず南インドで生まれ育った楽器で、棹の先に大きな瓢箪が取り付けてある。弦は金属で7弦。その内4弦がメロディー弦で人差指と中指に金属の爪をつけて演奏する。他の3弦が1度と5度のドローン弦で小指を使う。弦を押さえる左手の指にココナッツ油をぬって弦の上をすべらせて演奏する。ビーナはカーストの一番上のバラモン階級の人たちだけが演奏できる楽器で、民族音楽学者の故小泉文夫氏の解釈によれば「ビーナは古くからバラモンだけの楽器ではなかった。バラモンは他のカースト以上に殺生を忌むので、動物の皮や腸に触れたり身につけることを嫌う。口にあてる管楽器も不浄として避ける。そうすると、バラモンが使える楽器は木と金属で出来たビーナしかないことになる」。タミルナドゥ州タンジョールで、南インドの音楽会を早朝から深夜まで数日間聴いた時のこと。近くを流れる川の河原に張ったテントが会場になっている。はだしで砂の上にぺたっと座って聴く。演目は声楽が多く、周りの聴衆は南インドの声楽のターラと呼ばれる複雑な拍子を5つの指でとり、時に演奏者の意図がわかって「なるほど」と感心するところに興味を惹かれる。写真はバラモンの娘さんが心こめて弾くビーナ。大地に座ってその土地の音楽を聴くのは、この上ない贅沢だと思いながら。
楽器分類:ビーナ / 弦鳴楽器 / チター族
(検索語:ヴィーナ)


アルプホルン / スイス
Alphorn / Swiss File:012


2002年12月28日
スイスの国民楽器であるアルプホルンは長さ4メートルほどの木製の巨大なトランペット。指穴もピストンもない。木製のマウスピースに向かって唇をふるわせ、わずかに口や頬、唇の形や緊張の度合いを変えることで、メロディーを奏することが出来る。修練を積むと10個から18個の倍音を演奏することも可能だ。唇の動きだけで音階を変えるので音が不安定になり音階が微妙にはずれるけれど、そのずれがアルプホルン独特の個性を生んでいる。今日では観光的な意味あいが強いが、もともとは放牧の牛集めや深い谷を越えた村と村の素朴な通信手段に使われてきた。楽器の材料は樅や樫、松の木。アルプホルンの形にした木材の中をくりぬいて、対になった二つを張り合わせる。それを蔓でまいて固定したものだ。長いものだから二つか三つに分離してあり、使うときにつなげる。ラッパの先端部の曲がりは、急斜面に生えた木が雪で押し曲げられた根本の部分。アルプス地方の雪や風からの賜物だ。アルプホルンを主題にしたクラシック音楽ではモーツアルトの父・レオポルト・モーツアルト作曲のアルプホルン協奏曲がある。
楽器分類:アルプホルン / 氣鳴楽器 / カップ状吹口
(検索語:アルペンホルン、アルペン・ホルン、アルプ・ホーン、アルプホーン、アルプ・ホルン)


ニッケルアルパ / スウェーデン
Nyckelharpa / Sweden File:013


2003年01月04日
15世紀ころからスウェーデンの農村で楽しまれてきた楽器。欧州ではオーケストラやオペラといった芸術音楽が早くから発達したので、民衆の間で親しまれてきた民族音楽は---もちろん楽器もふくめて---魅力がなくなったらしい。だから世界の他の地域と較べると古来の民族音楽はほとんど残っていない。ニッケルアルパもその内の一つで20世紀始めには、生きた伝統楽器としてほとんど消えてしまった。しかし、スウェーデン固有の伝統楽器であるニッケルアルパを復興させようという運動が1980年前後に始まって、今日では大勢の人たちが演奏を楽しんむようになっている。初回に紹介した楽器・ハーディガーディに似て、弦を押さえるのにキーを使う。異なっているのは弓を使うこと。バイオリンを弾くときに感情表現をするのは、右手の弓を持つ手が大事だという。ニッケルアルパの方が微妙な音を表現できる。初期の形はメロディー弦の3弦だけだったが、後にドローン弦が加えられた。この写真ではキーが上下3段になって20、10、7個あり、3本のメローディー弦にそれぞれ2本、3本、7本のドローン弦が並んでいる。しかし、弦やキーの数は楽器によってさまざまに改良されている。復活してから発展途上にある楽器だ。
楽器分類:ニッケルアルパ / 機械楽器 / 第一グループ
(検索語:キーハープ、keyharp、ニッケルハルパ、nyckelharpa)


フヤラ=フジャラ / スロバキア
Fujara / Slovak File:014


2003年01月11日
フヤラ(=フジャラ)は150センチ以上もある長い管の笛。低音の音色に特徴がある。特殊な形だが、音を出す原理はリコーダーと同じ。ホイッスル・フルート(呼子笛)の典型である縦笛のリコーダーは、吹き口のすぐそばに鋭角の切り込みがあり、そこに息があたることで音が出る。フヤラも大きな切り込みが管の端にあり3個の指穴が下方にあって離れているため、このままでは吹いたとき指穴に手がとどかない。そこで息を吹き込む細い補助管が切り込みに向かって取り付けられている。その端にあるマウスピースから息を吹き込み、左手の指で指穴を押さえる。大きな、かすれたような音で、心をゆさぶるような響きがある。スロバキア国中部のデトバ(Detva)地方のごく狭い地域で用いられていたものだ。羊飼いがなぐさみに吹いたり、羊を集めるためのものだった。素朴な楽器でありながら、同時に中世の教会旋法の一つであるミクソリディアとヒポイオニアンの音階がでることでも知られ、音楽学の研究の対象になっている。写真の演奏者は見事な彫刻がほどこされているフヤラをおじいさんからもらって、吹き方を教えてもらったとのこと。音楽の専門家としてでなく、牧畜や農業を営んできた人たちの世代から世代へ伝承されてきた。現代では数少ない伝承音楽がここにあった。
楽器分類:フヤラ / 氣鳴楽器 / 呼子笛状吹口
(検索語:フジャラ)


バラライカ  / ロシア   楽器の音 = Sound
Balalaika / Russia File:015


2003年01月18日
ロシアの民族楽器といえば、すぐに頭に浮かぶのが三角形の胴をもったバラライカだろう。この特有の形の楽器は、実は昔からロシアにあるドムラというリュート属の楽器を元にして、形を変えて生まれてきた楽器だ。ドムラは1640年代ロマノフ王朝の皇帝ミハイロビチ帝に厳しく排斥された歴史がある。旅をしながら楽器ドムラをかかえて歌い踊る「漂泊する音楽師」を教会が否定し、民族楽器や民族音楽は邪教崇拝の源だと排斥した。楽器工房や販売が禁じられ、民衆からも取り上げてすべて燃やしたという。それでも民衆の音楽への気持ちは衰えることなく、ドムラのかわりに簡単に作れる三角の胴の楽器をひそかに手作りし、その後この楽器を芸術的に発展させたのが19世紀末のワシリー・アンドローエフだった。ロシアの民族楽器だけで編成されたオーケストラを創設し、バラライカを世界的に紹介したことでよく知られている。バラライカは大きさによって、プリマ、セクンダ、アルト、バス、コントラバス、の5種があり、プリマ・バラライカが一番小さく、ギターのように抱き抱えて演奏するもっとも一般的な楽器だ。3弦の内1、2弦は同じ音E とE、3弦目はAにするのが基本になっている。人差し指の爪でひっかくようにして、激しく弦を往復し連続音をだして演奏する。素朴な響きだが、逞しさとデリケートな表情に富んだ楽器だ。写真はロシアの民族音楽家たちが各国の民族音楽愛好家を集めて開催した、ボルガ河「ロシアの弦」クルーズで。キジ島にて。
楽器分類:バラライカ / 弦鳴楽器 / リュート族 撥弦楽器
検索語:

                  楽器収蔵庫-01__________楽器収蔵庫-02
                                                            








トップへ
戻る