人間の「格」とは?
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   日経新聞の連載小説「風の生涯」の主人公、矢野重也の話を読んでいる内に、ふと、人間には
格というものが、生来にせよ後から獲得されるものにせよ、存在する必要があるのではないかと思う
ようになった。彼は東大卒業後共産主義運動に入り、中国密入国、投獄、日本共産主義に決別し、
別派を作るも挫折、翻訳活動をしながら、次第に財界重鎮となってゆく話であるが、なぜ彼が私から
見れば華麗なる変貌をいとも易々遂げることが出来るのか、小説とはいえ、不思議に思っていた。
蛇足ではあるが、彼は又、非常に女性にもてるのである。著者の意図するところは私は知らないが、
彼には何か言葉では表せない、カリスマ如きではない、何かを持っている魅力的な人間として、
描出させようと言うことなのだろうかと、この小説を毎日読んで思っていた。
そこで前述したように「格」と言う言葉が、ふと偶然、脳裏に浮かんだのである。

吾妻山 99年4月撮影。吾妻山の雪ウサギ(写真左側の沢の雪がウサギに見える) この写真は本文とは全く関係ありません。風景をお楽しみください。
 漢語林の辞書によれば、「格」は1.至る。来たる。 2.正す。改める。3.そむく。食い違う。
4.たたかう。撃つ。 5.登る。あがる。 6.当たる。てむかう。7.止める 8.のり、おきて
9.地位。身分。品等。 10.ようす。おもむき。 11.格子。 12.カク。位。13.たな。
と言う意味があるという。日常的には9.、10.、12.、の意味くらいにしか
使われないようであるが、私も実はそう思っていたのであるが、このように様々な意味があったことは
驚きであった。
又言葉としては価格、扞格(たがいに相手を受け入れないこと)、規格、厳格、語格(言葉使いの法則)、
降(昇)格、合格、骨格、詩格(詩の作り方の規則)、資格、失格、社格、手格(?)、主格、人格、
正格(正しい格式)、性格、体格、定格、同格、破格、品格、風格、別格、変格、本格、と熟語も
多彩であり、意味不明のもの、現代用語ではほとんど使われない言葉があるが、更に、
格外(さだめのほか)、格言、格殺(手でうちころす、殴り殺す)、格子、格式、
格心(心を正しくする)、格致(おもむき。ようす。)、格調、格闘(手でうち合って戦う)、格納、
格物(儒学で究理の意)、格物致知(事物の理をきわめて、わが天賦の明知をきわめつくす。朱子学
では格物において自己の知識をその極にまで推し究めること。)と言う言葉が記載されている。

 大辞林(三省堂)によれば、格とは1.そのものの値打ちによってできた段階、位、身分など。
2.きまり、法則、規則、方式。3.やり方、手段、流儀。
更に大辞林を紐解くと、格差、格技、格上げ、格下げ、格付け、格袋、格別、格安、格律、格例、と
言う熟語があり、現代用語としてポピュラーなものから、難解なものまで記載されています。

その他一番ありふれているものに価格があります。適格、欠格、格安、格差、と言う言葉もあります。

研究社の和英辞典では「格式」standing;status;rank; 「等級」a class; a grade; 
「資格」capacity;character; 「定式」a rule。その他小学館英和中辞典で、rating(格付け)が
あります。英語に堪能な方はこちらの方が理解しやすいかもしれません。


 以上の意味から、私なりに解釈すると、格とは、「森羅万象、自明の決まったものから醸し出される、
雰囲気、概念で、社会や家庭に影響を及ぼす。社会が暗黙の内に認知する。」と言うものでしょうか。
それはヒトでも良いし、具体的なもの、抽象的なものでも当てはまると思います。

 現実を見ますと、ヒトでは、政界では自由党のO氏、自民党のT氏、共産党のF氏が、
司法界ではN氏が、医療界ではT氏が、等々数えたらきりが無いくらいに、社会に隠然たる影響を、
及ぼしている人たち(評価は分かれるとしても)を見ていると、その人たちにはある種の「格」が
あると思わざるを得ません。

 昔は、少なくとも第2次世界大戦後間もない頃までは、一家の主は職業地位を問わず「格」を
持っていた方が多かったと思う。それは夫婦にも当てはまり、それぞれ、格を持って日常生活を
送っていたと思う。民主主義は現在のところ素晴らしい制度であると小生思っていますが、
それを履き違えて、格まで失ったヒトがいるのではと小生自身思っています。
格は生来持っていなくとも、努力すれば、社会生活や、日常家庭生活で自然に身に付ける事は
可能と思っています。人格、品格、風格、性格等自己の欠点を認識して、厳格に陶冶してゆけば、
少なくとも他人に迷惑をかけない人生を送れるのではないかと思います。
今後、小生、人生の分岐点を過ぎた現在、出来るだけ、「格」ある人生を送れるよう
心掛けてゆきたいと思っています。


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