メディアを問わず、お気に入りのファンタジー作品について語りを入れるページです。
マッドメンシリーズは「孔子暗黒伝」「妖怪ハンター」「西遊妖猿伝」などで知られた漫画家・諸星大二郎が描いた神話ファンタジー(なんか軽い響きの言葉だ^^;))の傑作であります。当初短編「マッドメン」として登場したこのシリーズは、ニューギニアの奥地に暮らすガワン族の若き族長コドワを主人公に、日本人の少女・篠原波子をヒロインに据えたまま、長編(といってもコミックス2巻分にしかなりませんが。)にまで成長し、当初は作者も予想していなかったであろう結末を迎えています。
文明に対する伝統、科学に対する神秘の力を体現するコドワは、当初彼らの世界に力づくで入り込み、彼らの伝統を根こそぎ奪おうとする文明の傲慢への対抗者として描かれているのですが、チャンピオンコミックス所収の「オンゴロの仮面」〜「大いなる復活」では文明批判の要素をとどめながらもコドワが戦うのは強大な力を持つ悪霊アエン、更には自分自身の宿命であり、単純な文明対未開、科学対神秘という図式はなくなっています。
共感呪術、バナナ・タイプ神話(人の死の始まり。日本で言えば、コノハナサクヤヒメとイワナガヒメの姉妹とニニギノミコトの神話と同系列)、オオゲツヒメ神話(死んだ女神の身体から、穀類が生えてきたという穀物の起源神話)、更にはイザナギ・イザナミ神話(原初の男女でもある兄妹)等々、神話学的要素をこれでもかというほど散りばめながら、物語の中で浮いてないどころか、思わず神話学辞典とか開いて「オンゴロ」とか「アエン」とか引いてみたくなるほどのリアリティを感じさせるところはもう、よくもこんなことを思いついたというか、何かが憑いてたんじゃないかと思うほど。南方系神話に興味をお持ちの方には特にオススメ(大林太良先生とか吉田敦彦先生にも読ませたいと思う、諸星びいきの私であった・・・^^;))。
それから近親相姦モノ(ちとあけすけ過ぎる表現か?ブラコン・シスコン程度にしとくべきか)が好きな方にもオススメ。物語が進むにつれて、コドワはやたらカッコ良く、波子はやたら色っぽくなっていくのですが、エロティックでありながらナマナマしさを感じさせない、いわく言い難い味のある作品です(よくありがちな前世モノでは実はナイこともポイント高し。)。
ちなみに、「マッドメン」とは直訳すると「泥の男」(「狂った男」ではない)。実際にはコドワたちの一族の周囲にいる祖先たちの霊で、祭のときに泥でつくった仮面をつけて祖霊に扮して踊る風習があることからつけられた名称らしい。
【作品紹介】
「マッドメン」
文化人類学者を父に持つ篠原波子の前に、ニューギニアの奥地から、父に連れられて奇妙な客人がやってくる。全身に鮮やかな入れ墨を入れたその少年コドワは、ガワン族の長の息子であり、篠原教授のたっての願いで日本に留学することとなったのだという。西欧文明の知識と昔ながらの精霊信仰を矛盾なく併せ持つコドワに、戸惑いながらも興味を抱く波子だが、ある日、篠原教授とコドワの後見人的存在であるミス・バートンとの会話から、自分たち父子とコドワとの意外な関係を知ることになる。
一方、研究の完成を焦る篠原教授は、コドワに睡眠薬を飲ませ、意識を失ったコドワの全身の入れ墨を撮影することに成功する。教授がコドワを日本に連れてきたのも、部族の外の者に全身の入れ墨を見せることをタブー視するガワン族を出し抜くためだったのだ。
しかし撮影に立ち会った教授の助手が奇妙な刺し傷を受けた死体で発見され・・・